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「いい? 鳴海さんは人が好いしおっとりし過ぎ。相手は我々と違って人間じゃない異世界人。ホント、用心しないとダメだよ」
そんな風に夜音がクギを刺すのはいつものことで、鳴海が「そうお? 自分では割としっかりしていると思うんだけど」と返すのもそう。とにかく隙だらけなのだ。こんな異常事態となれば、余計に心配。
2人が足を踏み入れた大広間では、左半身だけがフツーのワイシャツ姿の奴が「来たぞ、最後の候補者が」と他の連中に告げていた。……右半身はどっかで見たような……飛び出した触角のような目。全身赤光りした銅貨のような、アンコウのような。
こ、これは。誰もが知っているあの、お金を主食とする怪獣では? と夜音は固まった。
「おおっと」
慌ててその半身をシュルリと左のワイシャツと対称に収めたそいつの胸にはさっきの大きな蝶ネクタイ。稲造に間違いない。
「ほっほっほ。では他の跡継ぎ候補者をご紹介しますかな」
他には3人。一見普通の人間に見えたが、稲造のなりや美月の異様さを見る限り、どんな相手かわかったものじゃない。夜音は背中に鳴海を隠すようにして身構えた。
「ソファにくつろいでいるのが私の姉、つまり長女の美花、隣がその夫の穂高です」
家の中だというのにドレッシーなイブニングドレス風の美花。照明の加減かドレスは七色に次々色が変わって見える。美花は顔を上げもせず、穂高はギラギラ脂ぎったバーコード頭で睨むように見上げてくる。
「そっちの隅でギターをいじってるのが末の弟の松也」
金髪、革ジャン、エレキギター。まあ一応はロックミュージシャン風ではあるが、何だか動きがぎこちない。
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