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「で、跡継ぎ資格者はこれで全員?」
夜音が聞くと、稲造が頭を掻いた。
「すいませんね……あと、部屋に引きこもっている私の妻の葉子がいて。直系は5人、配偶者を入れると全部で7人、……何ならあなたも参加します?」
「何でだよ。あたしゃただの付き添いだってば」
かなり緩い、テキトーな跡継ぎ争い……
「こうなると、それぞれの母親が気になるな……」
夜音のつぶやきを拾った稲造は、嬉しそうにまた半身お金好き怪獣に変わり。
「私の母の家系はですね!」
「――言わんでもわかる。で、そっちの皿数えてるガキンチョ妹の家系も見当がつく。その派手な……ええと、美花お姉さんは……カメレオン系?」
「ご名答! 売れない女優なんだとか。おととい急にここの娘だと言ってやってきたのだが」
「え……それ、いわゆる成りすましってやつじゃないの?」
「しっつれいね!」
全くだ、と夫兼マネージャーと名乗った穂高と二人、怒った。が、財産分与の前々日に急に現れた自称長女など、明らかに怪しい……カメレオン女優だし。
「ボクにも聞いてよ」
ちょいちょいっと夜音の袖を引っ張るロックミュージシャン気取りの坊やは……名前何だっけ。
「ボク松也。ねえお姉さん、カッコいいね、その革ジャン。交換しない?」
松也がスルッと自分の革ジャンを脱いだら……ポロっと肘から下が落ちた。――落ちた?
「おやおや、っと」
松也はニコッと笑ってそれをガシッと肘にはめ込む。
「……あんたのお母さんは、合体ロボ系?」
「わあすごい。一発でわかったの、お姉さんだけだよ!」
松也はすっかり夜音になついて隣に座る。
もう何でも来いや。夜音は驚くことをやめた。
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