巖頭(いわお)館へようこそ

7/13
前へ
/13ページ
次へ
「で、跡継ぎ資格者はこれで全員?」  夜音が聞くと、稲造が頭を掻いた。 「すいませんね……あと、部屋に引きこもっている私の妻の葉子がいて。直系は5人、配偶者を入れると全部で7人、……何ならあなたも参加します?」 「何でだよ。あたしゃただの付き添いだってば」  かなり緩い、テキトーな跡継ぎ争い…… 「こうなると、それぞれの母親が気になるな……」  夜音のつぶやきを拾った稲造は、嬉しそうにまた半身お金好き怪獣に変わり。 「私の母の家系はですね!」 「――言わんでもわかる。で、そっちの皿数えてるガキンチョ妹の家系も見当がつく。その派手な……ええと、美花お姉さんは……カメレオン系?」 「ご名答! 売れない女優なんだとか。おととい急にここの娘だと言ってやってきたのだが」 「え……それ、いわゆる成りすましってやつじゃないの?」 「しっつれいね!」  全くだ、と夫兼マネージャーと名乗った穂高と二人、怒った。が、財産分与の前々日に急に現れた自称長女など、明らかに怪しい……カメレオン女優だし。 「ボクにも聞いてよ」  ちょいちょいっと夜音の袖を引っ張るロックミュージシャン気取りの坊やは……名前何だっけ。 「ボク松也。ねえお姉さん、カッコいいね、その革ジャン。交換しない?」  松也がスルッと自分の革ジャンを脱いだら……ポロっと肘から下が落ちた。――落ちた? 「おやおや、っと」  松也はニコッと笑ってそれをガシッと肘にはめ込む。 「……あんたのお母さんは、合体ロボ系?」 「わあすごい。一発でわかったの、お姉さんだけだよ!」  松也はすっかり夜音になついて隣に座る。  もう何でも来いや。夜音は驚くことをやめた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加