1人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、遺言書の公開? 大体財産てどんなもんよ」
「そりゃ、人間界で一生遊んで暮らせる額の。大体我々はこんな……いわゆるミュータント。人間社会は差別が激しく世知辛い。金はあった方がいいわけですよ」
「……弁護士とかは? 判定はどうすんのさ?」
ようやくこぽこぽとコーヒーの落ちる音がし始める中、夜音は無関係なのにすっかり本題を聞く羽目に。肝心の鳴海は今、コーヒーしか目に入っていない。
「この鵙尾家の屋敷、通称『巖頭館』では、遺言という風習はない。ご先祖を一番喜ばせた者が後を継ぐ。そういうしきたりなのですよ」
「……つまり?」
「これから、大かくし芸大会の始まりってことです~~~!」
稲造が、ジャーンと両手を上げ、何色ものスポットライトが広間の舞台を射した。そこに燦然と光る「碑」が、ご先祖様の集結……だとか。なるほどその「碑」から次々とモヤっとした影が踊るように立ち上ってきた。
夜音は唖然とするしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!