巖頭(いわお)館へようこそ

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「で、遺言書の公開? 大体財産てどんなもんよ」 「そりゃ、人間界で一生遊んで暮らせる額の。大体我々はこんな……いわゆるミュータント。人間社会は差別が激しく世知辛い。金はあった方がいいわけですよ」 「……弁護士とかは? 判定はどうすんのさ?」  ようやくこぽこぽとコーヒーの落ちる音がし始める中、夜音は無関係なのにすっかり本題を聞く羽目に。肝心の鳴海は今、コーヒーしか目に入っていない。 「この鵙尾家の屋敷、通称『巖頭館』では、遺言という風習はない。ご先祖を一番喜ばせた者が後を継ぐ。そういうしきたりなのですよ」 「……つまり?」 「これから、大かくし芸大会の始まりってことです~~~!」  稲造が、ジャーンと両手を上げ、何色ものスポットライトが広間の舞台を射した。そこに燦然と光る「碑」が、ご先祖様の集結……だとか。なるほどその「碑」から次々とモヤっとした影が踊るように立ち上ってきた。  夜音は唖然とするしかなかった。  
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