Ⅲ.対峙

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 私は凍りついた。  全く気付かなかった。突然そこに現れたのだ。  いつの間にか、隣に女の子が座っていた。サスペンダー付きのスカートの、前髪の長い彼女が座っていたのだ。  そして訊いてくる。 「なんて……歌ったの?」  これは完全にまずい。あれほど警戒していたのに、私はメロディを奏でてしまった。歌ってはいないにせよ、これだけでもスイちゃんを呼び寄せるには十分だったらしい。 「なんて……歌ったの?」  めっちゃ訊いてくる。どうしよう。何か言わなきゃ、言わなきゃ……。  キョウスケ、どうしよう。私やっちゃったよ。やっぱり話聞くんじゃなかったよ。あんたの言う通り、瀬田川よりも全然、怖いことになったよ……。  うん……?  瀬田川、そうか、瀬田川か!  私は喉を振り絞って、震える声で歌った。 「ス……スイ、スイ、スイ、香水のスイ♪」  どうだ……!?  私の渾身の誤魔化し、通じただろうか。  私は恐る恐る、隣に視線を送ってみる。  
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