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私は凍りついた。
全く気付かなかった。突然そこに現れたのだ。
いつの間にか、隣に女の子が座っていた。サスペンダー付きのスカートの、前髪の長い彼女が座っていたのだ。
そして訊いてくる。
「なんて……歌ったの?」
これは完全にまずい。あれほど警戒していたのに、私はメロディを奏でてしまった。歌ってはいないにせよ、これだけでもスイちゃんを呼び寄せるには十分だったらしい。
「なんて……歌ったの?」
めっちゃ訊いてくる。どうしよう。何か言わなきゃ、言わなきゃ……。
キョウスケ、どうしよう。私やっちゃったよ。やっぱり話聞くんじゃなかったよ。あんたの言う通り、瀬田川よりも全然、怖いことになったよ……。
うん……?
瀬田川、そうか、瀬田川か!
私は喉を振り絞って、震える声で歌った。
「ス……スイ、スイ、スイ、香水のスイ♪」
どうだ……!?
私の渾身の誤魔化し、通じただろうか。
私は恐る恐る、隣に視線を送ってみる。
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