玄関の靴

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 数日前、息子が学校の友達を家に招いた。  その日は私の仕事が休みで、できる範囲でみんなをもてなし、楽しく遊んで帰ってもらった。  でもそれ以来、何だか家の中の様子がおかしい。  いつも、家族以外の誰かがいるような感じがする。  それでも、具体的に何か見たとか物音を聞いたとかはなかったので、気のせいだと思っていたが、今日、帰宅した際に私は『それ』を見つけてしまった。  玄関の隅に置かれた、見覚えのない子供靴。  息子に聞いてみたけれど、どこかから持ってきたとかではなかった。  念のため、この前家に来た子達の中で、自分の靴がなくなった子がいないかを聞いてみてと頼んだのだけれど、翌日学校から帰った息子は、そんな子はいないと答えた。  だったらこの靴は誰のものなのだろう。そして、どうして我が家にあるのだろう。  これは私の憶測だけれど、家の中の様子がおかしくなったのは、この靴の持ち主が家にいるせいだ。だったらすぐさま靴を捨ててしまいたいけれど、それはそれで、靴がなくなったからもう家から出ないとか、我が家に居ついているらしき『何か』がそう考えてしまう可能性もある。  しばらく考えて、私は、指定した日に、また友達に家に来てもらうよう息子に頼んだ。  さて当日、我が家に招いた子達に一時間程遊んでもらった後、私は、全員で出かけようと提案した。  ちょうどこの日は、近くの生涯学習センターで催し物がある日で、その日を狙って私は息子の友達を集めたのだ。  センターに向かい、皆で催しに参加する。たいていの催しが屋内で行われているため、全員自然と靴を脱いだ。  さて、一通り催しを楽しんだ後、帰り際に、私は家から持ってきたあの靴をそっとセンターの靴箱に置いた。  そこからは、一人一人を家まで送り、最後に息子と二人きりで帰宅した。  この日以来、家の中て感じていた何か気配はなくなった。  全員でお出かけ。その言葉で家に居ついていた『何か』も一緒にセンターに行き、そこに靴を置いたことで、もう我が家について来ることはできなくなったようだ。  施設の人達には悪いけれど、あそこは限られた時間だけ開館している場所。誰かあの場所で暮らしている訳じゃないから、申し訳ないけれど、うちにいたあの『何か』の居場所になって下さい。 玄関の靴…完
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