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バスを降りた私は昨日同様三波くんが送ってくれると言うのでお言葉に甘えて送ってもらっていた。
「何かごめんね、わざわざ」
「気にしないで。俺がしたくてしてるんだし」
「でも……」
つくづく良い人だなと思う反面、一緒に帰ると毎回こうなるのも気が引ける。
何とかして断る理由は無いものか考えてみたものの、結局何て言って断ればいいのか答えが出ないまま自宅前へ着いてしまった。
「それじゃあ、また明日ね?」
「あ、あのさ、三波くん」
「ん?」
「その、登下校一緒にするのは全然良いんだけど、帰りはさ、バス停で別れる事にしない?」
「山野井さん、まだ気にしてるの? こうして送るのは俺がしたいからだよ?」
「そ、それはそうかもしれないけど、その、やっぱり申し訳なくて……」
「……それは、俺がただのクラスメイトだから?」
「え?」
「もし俺が幼馴染みとか彼氏だったら、申し訳なく思ったりはしないのかな?」
「そ、れは……」
三波くんのその質問に、私は何て答えれば良いのだろう?
そもそもどうして彼は家の方向も違うのに送ってくれるのか。
その事と今の質問から一つの仮説が頭に浮かぶ。
(……もしかして、三波くん、私の事……?)
けどまさか、そんな事は有り得ない。流石に自惚れ過ぎている。
(無い無い! 有り得ないよ! だって同じクラスでたまたま同じバス停で降りたってだけじゃん)
馬鹿な事を考えてしまった自分に呆れながら私はもう一度三波くんに言う。
「やっぱり、家の方向が違うから申し訳ないの。だからね、バス停までで良いなら明日からも登下校一緒にしよ? ね?」
家の方角が違うから申し訳無い――これが一番真っ当な理由だと思った私が改めて彼に提案すると、
「――分かった。それでいいよ。だけど、出来れば同じ町内に住むただのクラスメイトとしてじゃなくて、それ以上の関係として一緒に登下校出来たら嬉しいんだけど……どうかな?」
「え?」
「俺さ、山野井さんの事、好きなんだ」
思いもよらぬ衝撃的な言葉が返ってきた。
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