嫌いじゃないなら、何なの?

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「――んんっ、」  何が起きているのか、理解するのに一瞬時間が掛かった。 (な、に……、何で私、周にキス、されてるの?)  初めてのキス。  こんなんじゃなくて、もっとロマンチックで甘い展開を期待していた。  こんなの、ロマンチックの欠片も無い。 「んんっ、ふぁ、……っん、」  息苦しくて、何だか怖い。  唇が離れたと思ってもすぐにまた塞がれるから上手く息継ぎすら出来なくて、私苦しさに周から逃れようと必死に抵抗するしぐさを見せる。 「――っ、はぁ、はぁ……っ」  そして、何度か唇を塞がれた後でようやく解放された私は身体を起こして息を整えていく。 「……な、んで……こんなこと、するの?」 「……そんなの、察しろよ」  察しろなんて、そんなの、私の自惚れじゃ無ければ、好きだからという事になると思うけど……有り得ない。  人の事こっぴどく振っておいて今更好きだとか、そんなの有り得ない。  気まぐれだ。  いい加減で女にだらしない周の気まぐれに決まってる。  もう、これ以上周のペースに持っていかれない。  こんな、自分勝手で最低な幼馴染みなんて、大嫌い。 「……帰って」 「小春……」 「お願いだから、もう帰って!」  悲しい訳じゃないけど、周がここまで自分勝手で最低な男だったんだと思ったら涙が込み上げて来て、これ以上周の顔を見たく無かった私は大声を張り上げて帰るよう言い放つと、何か言いたげな表情を見せつつもすぐに顔を背けた周は無言で部屋を出て行った。
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