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三波くんの存在はあっという間に他のクラスや学年にも知れ渡り、一目見ようとうちのクラスには女子生徒たちが集まって来る。
それは休み時間毎に続き、放課後になると更に酷くなった。
(何がそんなにいいんだか……)
三波くんは格好良いと思うけど、わざわざ他のクラスから見に来なくてもと思いつつ、帰り支度を終えた私は混み合っている後ろのドアを避けて前のドアから廊下へ出た。
だけど、後ろのドアの方へ差し掛かった刹那、三波くんを一目見たい女子生徒たちの押し合いがあったのかバランスを崩した一人の女子が後ろからぶつかって来て、その弾みで私は前に倒れそうになった。
「きゃっ!?」
転ぶ事を覚悟して目を閉じ、受け身の体勢を取りかけた時、「危ねっ」という声と共に私の身体は支えられた。
目を閉じていても、その声が誰のものかくらい分かる。
間違えるはずも無い。
私を支えてくれたのは他でもない周だった。
「あ……」
嬉しかった。たまたま通りがかって咄嗟の事だったとしても。
だけど、不可抗力と言えど久々に周に触れた訳で、心臓が飛び出るくらいびっくりした私は恥ずかしさから勢い良く離れ、お礼もそこそこに顔を背けてしまったのだ。
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