寂しがり屋

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寂しがり屋

   一緒に住み始めてから、レイが以外にも寂しがり屋だということが判明した。一人でいる覚悟が出来てるんだと思っていたのに、いつもの冷めた素っ気ない態度とのギャップにやられた。 「ねえ、何してるの?さっき『ゴジラ』一緒に見ようって約束したよね。なんでブログとか書いてるの」  確かに約束はした。ただ、今すぐとは言ってない。なのにテーブルに何やらおつまみとか用意して待っているのは勘弁してください。  私にも色々とやりたいことがあるんですよ。   「すぐに終わるよ。これ日記の替わりだから、忘れないうちに書いとくんだ。先に見ててもイイよ」 「ダメ、梅酒ソーダも用意したのに(ヌル)くなっちゃうよ」  はあ~甘えた女か、全身が液体と称される猫よりだな。 「お願いだから早送りにしてくれ。時間がない。内容がわかればいいんだから」  渋々ソファに座り、隣のレイに冗談交じりにお願いしてみた。  「信じられない、しおりってデリカシーのカケラもないね。それが好きな映画を見る時の態度なわけ、いいよ、もう一人で見るから、その代わり二度と一緒に見ないからね」 「レイさま、拗ねちゃいましたか?ゆるちて~~~」  肩にしな垂れかかったのを、にべもなく払いのけられました。このくらいのボディタッチはOKなのは確認済みです。いまは拒否られたのではなく、単にお怒りのご様子なのです。    結婚を前提にとかの大義名分があるわけでもないが、こうして一緒にいることが大事なんだと思った。  ほとんどの家具は手持ちの物を持ち込んだが、そういうになった時のためにWベットにしようとレイが提案し新しく購入した。  そうだ、機能しないわけではないのでチャンスはある。障壁はないに越したことはない。それが訪れるのか、永遠に訪れないのか......容赦のない睡眠不足は続く。    ベットに入ると動悸が収まらず、たまに脈が飛んでる気がする。レイが寝返りをうつたびに、神経を尖らせて身構えている自分がいる。これでは身も心も持ちません。  しばらく蛇の生殺しのような日々が続いたが、私が見つけてきたパートが、それに終止符を打った。  弁当屋の配膳の仕事だ。午前3時に入り退社が午前7時だ。当然、早寝早起きでベットに横になるや否や、寝息を立てて熟睡である。気に病む余裕もない。  しかも仕事は弁当の容器におかずを並べるだけの単純作業で、あっという間に4時間が過ぎる。頭を空っぽにして黙々と作業をこなすのは、性に合ってると思った。今まで地を這う地獄のような仕事に追われていたので、妙にこの単純な作業が気に入っていた。  仕事から帰ってくると、真っ先にグレースが飛んでくる。前足と後ろ足が上手く交互に出せているか心配になるような慌てぶりで駆けてくる。メチャメチャ可愛いくて、スマホを取り出し無駄に同じような写真を撮りまくる。    朝のごはんはカリカリをあげる。色々試したが乳酸菌入りのが美味しいらしく残さず食べる。新しい水に変えてトイレの掃除が終わる頃に、レイが起きてくる。  上半身が裸なので、すかさず文句を言う。 「ねぇ、わかってる?そういう煽情的なのなしだよ。自覚が無さすぎる」 「ごめん、一人暮らしの癖が抜けなくて......許せ」  ごめん、許せと言われても、あなたの存在自体がすでに煽情的なんですけど……と思う。  あーあ、どうすっかなぁ~悩ましい今日この頃です。  
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