3/3
前へ
/8ページ
次へ
 連絡が取れなくなる少し前の期間、ぼくは仕事の都合で都内を離れていた。離れていたと言っても小田原だから通えなくもなかったのに、そうしなかった。暫く、メッセージのやり取りだけで過ごしていた。ぼくは充足していた。  それがいけなかった。他の男が、彼女を放っておく訳がないのだ。 「好きなひとができたの。お別れしよう」  メッセージは非常に端的かつ、クリティカルなものだった。絵文字やスタンプすらない、一切の隙を見せない攻撃だった。  何か悪い所があったのか、ぼくは一人悶々と考えた。思い当たらなかった。強いて言えば、充足してしまった事だ。ぼくが彼女に万足していたように、彼女が満足していたとは限らない。若い子の一年半だ。ぼくの数倍の満足量は必要だろう。何しろ彼女は魅力的で。自身の魅力を十分、理解していたのだから。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加