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3
いずれにせよ、終わりの時だった。彼女がぼくの知らない誰かを好きになった、それだけの事だった。一年半もの間、ぼくは彼女と分不相応な時間を過ごした。ぼくにはそれで十分の筈だった。でも。
「ぼくは君を、傷つけた?」
ぼくは気になっている事を訊いた。
暫く間があった。ぼくはこれが最後、と彼女の小さな顔のパーツを仔細に見つめた。
「もっと傷つけてくれて、よかったのに」
その言葉は意外だった。けれどぼくはきっと、彼女との関係を壊すのを畏れて、踏み込まなかったのかもしれなかった。歳をとると、そういう事だけはケアするようになる。
「ごめんね」
二人ほぼ同時に言って、何となく笑いあった。恋が終わる感覚を、また感じる事になった。こんな恋の終わりがあるなんて。
「ありがと」
ぼくはそう言い、彼女は曖昧に首を振った。
なんでお礼なんて言ってるのか、ぼくも分からなかった。でも恋愛って、そんなものなのかもしれない。
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