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妖退治
月曜日。
儀式があったのは土曜なので、あれから2日たった。
灯は徒歩圏内にある男子校に通っている。それなりに偏差値の高い有名な高校だが、卒業後は家業に携わる予定の灯にとっては偏差値などどうでも良かった。
ただ家から通いやすく、部活やら学校行事やらが忙しくなく、家業に支障が出ない学校ということで選んだだけだ。
実際、部活も強制でなければ学校行事も放課後に居残って準備をするようなものはない。この学校を選んでよかった。
灯がブレザーに袖を通して登校の準備をしていると、部屋の片隅で寝ていた誘宵がむくりと起き上がった。
誘宵は妖なのに人間のように睡眠をとるし食事も人間と同じものを好んだ。風呂も好きなようだ。
初日に眷属らしく振舞うと誘宵は言っていたが、特にそれらしい様子はなく、酒を飲んだり家を適当にウロついたり、灯に話しかけてきたりとのんびり過ごしているようだった。
「何だ、でかけるのか」
「学校だよ。今日は平日だから」
長い間封印されていた誘宵は、案外現代日本の常識を知っていた。
テレビやスマホを興味深そうに見ていたが存在は知っていたようだし、たまに通じない単語もあったが、誘宵は理解するのも早く会話に困ることもなかった。
「ああ、学校か。ご苦労様。暇だし俺もついて行くとするか」
困ってはいないが、たまにおかしな発言をする。今、誘宵が発した言葉はまさにそれだ。
「何言ってるんだよ。学校は部外者立ち入り禁止。ついて来るな」
「お前の眷属なのに?」
「そうだよ、生徒じゃないし。学校から見れば行事のある日以外は親だって部外者だよ」
「厳しいんだな」
「それが普通なの。勉強する場所なんだから」
説明してやれば、誘宵は不満そうではあるが納得はしたようだ。
「そんなもんか」と呟くと、灯に何かを投げた。
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