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「灯、これやるから身に着けてろ」
灯の手の中に、赤い紐につけられた勾玉が落とされた。勾玉は綺麗な緑色をしている。翡翠でできているようだ。
「ネックレス?」
「現代ではそういう言い方をするのか? ほら、俺と同じ」
見れば、誘宵の首元も同じもので飾られていた。誘宵は黒い勾玉だ。
「それがあれば、俺はお前の居場所がわかる。何かあったらすぐに駆け付けることができる。服の下にでも隠して、常に持ってろ」
なるほど、これは妖にとってのGPSのようなものらしい。
「学校に行くだけだよ。特に危険なことはないから」
今までだって、1人で過ごしてきた。
道で妖に遭遇することもあったが、自分の力で何とかなってきたのだ。
「俺はお前の眷属だぞ。お前の身を守る義務がある。お前の先祖に捕まった時に、そういう呪をかけられてるんだ。主を選べる程度の自由はあるみたいだがな」
昨日も誘宵の口から似たような話を聞いた気がする。
この男は軽い口調で話していたかと思えば、急に真面目に話し出すのだ。気分屋とまではいかないが、掴めない性格をしている。
「えっ眷属の自覚あったの。この2日間、だらだらしてただけなのに」
「前も言ったろ。戦いがなけりゃ、俺の出る幕じゃねえよ。いいから持ってろよ。お守りみたいなもんだ」
そこまで言われてしまうと、不要だと受け取らないのも悪い気がした。
「じゃあ、一応もらっておく。ありがとう」
服に隠れるとはいえ、この大きさのものを身に着けるのは授業中に気になってしまいそうだ。
灯はもらった勾玉の首飾りをブレザーのポケットに入れた。
「あ、でも主が変わったらこれも返すから」
「変わらないから、その必要はないな」
誘宵は「くどい」とは言わず、ただ笑顔を見せるだけだった。
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