妖退治

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灯は学校が好きだ。 勉強も運動も嫌いではないし、同級生たちとのたわいない会話も楽しい。 家ではそうはいかない。使用人として雇われている人も、一族の人間も父の眷属である雛彩芽も灯に優しいが、父と妹に疎まれているせいで居心地が悪いのだ。 それに比べて学校では教師もクラスメイトもそのままの灯を受け入れてくれる。 「委員長、おはよ!」 「おはよう」 下駄箱で靴を履き替えていると、クラスメイトの鳴海(なるみ)が明るい声で挨拶をしてきた。クラスメイトのほとんどは灯のことを「委員長」と役職名で呼ぶ。その呼び名の通り、灯はクラス委員長をしている。 一年生の時に「真面目そうだから」という理由で押し付けられたのだが、その年は特に問題なく委員長の仕事をこなした。 委員長なんて大変そうなイメージがあったが、やってみると大したことはなかった。クラスの皆も協力的で、先生には感謝をされる。 これだったら来年もやってもいいな、なんて思っていたら、二年時の新しいクラスで委員長に推薦され、投票で一位を取り、また委員長を務めることとなった。 三年にもなれば「もう委員長は菊峰でいいんじゃないかな! ちゃんとしてるし」という空気になり、顔パス並みの速さで委員長が決定された。 クラスメイト達はもう少し考えても良かったのでは? と思わなくもない。だが、クラスメイトが「委員長」と親し気に接してくれるのは嬉しいものだ。 灯は三年生で、この学校に通えるのもあと数か月。 そう考えると寂しさを感じるのだった。 今日も学校での時間はつつがなく過ぎていき、今は放課後である。 委員長の仕事といえば週に1回集会があるくらいで、それもすぐに終わる。帰宅部の灯はホームルームが終われば寄り道もせずに家に帰るのが日常だった。 クラスメイト達に挨拶をして校舎を出る。 いつも通りの放課後だ。
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