妖退治

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家につくと門の戸締りを確認している雛彩芽に出会った。 菊峰邸はいくつもの門があり、開けた形跡がないか毎晩確認しているのだ。 「ちょうどよかった、コイツが聞きたいことあるんだと」と誘宵は声をかけ、「後は知らん」とばかりに灯を残してさっさと家の中へと消えて行った。 自由奔放な誘宵の行動には呆れるが今はそれどころではない。灯は胸の中にくすぶっている気持ち悪さをすぐにでも吐き出したかった。だが、どう切り出せばいいのかわからない。口を開きかけるが言葉にできず、結局黙ったままになってしまう。 そんな灯に対し、雛彩芽は「こんなところでは灯様のお体が冷えてしまいますから」と、家に入るよう促した。 お茶を淹れてくれると言うので、部屋には戻らずにリビングに向かう。 ちらりと見た台所の流し台には先ほど灯が使った食器類は見当たらなかった。おそらく誰かが片付けてくれたのだろう。申し訳なさに胸が痛んだ。 座って待っていると、湯呑の乗った盆を手に雛彩芽が近づいてきた。 「お待たせしました。外は寒かったでしょう。そんな薄い装束ひとつで」 「うん、寒かった。気合い入れて装束にしない方が良かったかも」 湯呑を置き、雛彩芽は灯の対面に座るが何も言わない。灯の「聞きたいこと」を待ってくれているようだ。 灯は意を決して口を開いた。 「あのさ、誘宵に聞いたんだけど」 「なんでしょうか」と初めはいつものようにニコニコとしていた雛彩芽だったが、灯が誘宵から聞いた話を告げると、さっと表情が変わった。 彼女がこんな硬い表情をするのを見るのは初めてのことかもしれない。 灯がぽつりぽつりと断片的に告げる言葉を、雛彩芽は黙って聞いている。灯が全て話し終えると、観念したかのように雛彩芽は目を伏せながら答えた。 「……確かに、その通りです」 霊力を持つ存在を殺めればその力を取り込むことができるというのは本当らしい。
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