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「何だ、目つきの悪いガキだな。俺のご主人サマを睨んでんじゃねーぞ」
黙ってその場を離れようとした灯の後ろから不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「誘宵」
後ろを振り返ると着物を着崩した誘宵が立っていた。
髪もボサボサで、いかにも寝起きといった様子だ。機嫌の悪そうな表情をしている。
「目つきの悪いガキ」と言われた花波は、ひるむこともなく誘宵を挑発した。
「そんな口がきけるのも今のうちね。すぐにお父さまが私と契約を結べるようにしてくださるんだから。灯と契りの解消をしたら、新しい主は私よ」
ふふん、と勝ち誇った様子の花波に対し、誘宵はまるで興味がなさそうに返す。
「灯と契約解消する気はないけどな。それに、そうなったとしてもお前を主と認める日が来ることはない」
「なっ」
「お前の霊力は貧弱だな。何つーか、浅い皿みたいだ。灯と比べると器が小さい。そんな奴と俺が契るわけないだろ。お前の先祖にはもっとマシなのがわんさかいたぜ。俺はその誰とも契約しなかったのに、何でお前は選ばれると思ってんだ」
そう言い終えると、大して重要な話をしていないとでも言うように誘宵はあくびをする。
それまで余裕の表情をしていた花波が声を荒げた。
「私は百年に一度の逸材と呼ばれているのよ! それが灯に劣るなんてことないわ」
誘宵の言葉に灯も疑問を持った。花波の霊力は優れていると大人たちは口を揃えて褒め称えていたのだ。それが誘宵からすれば貧弱なものだとは。
さらに、灯よりも劣っているようなことも言っていた。どういう意図で誘宵がそのように考えるのか、灯にはわからなかった。
「人間から見たらそうなんだろうな。俺には何も感じねーけど。俺たちの仲間にはお前みたいな乳臭いガキが好きな奴もいるから、そういった輩と契約すればいいさ」
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