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「でも、菊峰の名前を使う許可がもらえないかも。そうなると仕事が来ないと思うんだ。退魔師って一般的に認知されている職業じゃないし、依頼する側も無名よりも名の知れたところに頼むと思うし」
話せば話すほど自信がなくなってきた。
灯はどちらかといえば心配性だと自覚している。不安材料を挙げていけばキリがない。悪いことはいくらでも頭の中に思いついてしまうものだ。
「何とかなるんじゃねぇの。俺もいるし。腕がたつ退魔師がいるって噂になれば、別に家の名前出さなくても仕事来るだろ」
当然のように誘宵は話す。
会って数日もしないのに、どうしてここまで灯を信頼してくれているのか。不思議ではあるが嫌な気持ちではなかった。
「……そうだね」
「お、ようやく『契りを解消する』って言わなくなったな」
灯の目の前では誘宵がニヤニヤしている。
言われてみれば数日前はそのことで頭がいっぱいだったのに、今ではそんなことは考えなくなっていた。
誘宵の自由気ままな態度に慣れたせいか、彼が自分のことを気にかけてくれているからか。
案外自分も単純なのだと思った。
「確かに。どうでもよくなったのかも」
「お前、どうでもいいは薄情じゃねぇか。どれだけ俺が待ってたと思ってんだ」
「待ってた?」
誘宵はずっと巻物に封印されていた。封印を解かれたとしても、眷属の契りを結ぶほどの退魔師に出会えなかったのも事実である。「待っていた」と言われると気になってしまうが、言葉通りで深い意味はないのかもしれない。
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