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「この馬鹿がっ!」 怒鳴り声と共に、灯の顔めがけて座敷の上座から座布団が投げつけられた。 座布団なので当たっても大して痛くはないが、実の父からこのような扱いを受けることに、つらい気持ちになる。 「自分の軽率な行動のせいで、申し訳ありません」 灯は畳にこすりつける勢いで頭を下げ、こう答えるしかなかった。 花波は疎まれている灯とは違い、父親からの寵愛を受けている。次期当主の座も、灯ではなく花波が受け継ぐ予定だ。 同じ母親から生まれ同じ環境で育ったのに、どうしてここまで差が出てしまったのかは灯にはわからない。 そんな花波の成人の儀が灯のせいで台無しになってしまったのだ。父からの叱責を受け入れるしかなかった。 「もういい。方法がわかり次第、お前と誘宵の契りは解消させる。それまでは誘宵の機嫌を損ねるようなことはするなよ。あいつは菊峰家が封印した妖の中でも上位の強さだ。先祖の封印が魂を縛り付けているとはいえ、お前のような未熟者が主では我々に敵意を向けるかもしれん。面倒なことは起こすな」 「……わかりました」 「お前の顔を見てると気分が悪くなる。さっさと部屋から出て行け」 めんどくさそうに吐き捨てると、父は灯から背を向けてしまう。 自分が呼び付けておいてその言い草は何だ、と思うが灯は口答えをしない。 「失礼します」と一礼して部屋を出た。
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