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🦠←謎の物体、現る!
巷ではこれから季節は夏だというのに、ここからは
先は、冬本番のお話である。
「パール!待ってぇパールったら〜」
「厳しい戦いだね〜」
紗倉家の執事犬パールが、ティーンエイジャーの
女子2人を従え、調子に乗っかったお散歩中に
事件は起こった。
冬場に葉がすっかり落ちる木を落葉樹というが、
桜も、そのサークルに属する樹木である。
「おっ?櫻子、マミ。アレを見てみ」
冬場は一層、毛深く白い、日本スピッツの
パールは、目線で方角を示し、ついで
気になる木に近寄ると、クンクンと鼻を鳴らした。
お城の構内には百万本はオーバーだが、
そう言いたくなるほどの本数の桜が、今はただ
冬の厳しい寒さを耐え忍んでいるのである。
そのモノトーンの風景は、ある意味、
嵐の前の静けさと言えるであろう。
「あ、何これ?パール」
「ほんまや、アフロのウィッグみたいやん?」
すっかり葉の落ちた高い枝に、丸々とした大きな
緑の団子が、突き刺さっているようなソレについて、
「ヤドリギ(寄生木)っていう奴さ」。
そう言うとパールは、丸い目を細めた。
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