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「や~、ルーちゃん、ひっさしぶり~~! あはははは、マジで変わんないねぇ。いいねぇ、ずっと男前でいられて~~~~!」  入り口で出迎えた時は普通にしていたのに、場所を神官長室に移し、気心の知れた者達しかいなくなった途端、いつもの口調で話し始めたのは、アシェイラ神殿を束ねる長、リチャード・ライチェル神官長だ。  諸事情で二十代の外見を保っている旧友達を羨ましがりながら、リチャードは憮然としている相手の様子を懐かしく感じていた。 「相変わらずだな、ライチェル神官長。年をとって少しは落ち着いたかと期待していたんだがな。変態は治らないという事か」 「ひっどいな~、ルーちゃんは。ねえ、シャルもそう思うでしょ?」 「う、ううううう、お久しぶりですううぅぅ、ウインター神官長補佐ああああッ!」 「神官長補佐はお前だろうが、シャル」 「ううう、そうでした。すみませんでした、大神官補佐」  シャル・ウオッカ神官長補佐。  リチャード・ライチェル神官長とシャル・ウオッカ神官長補佐。かつて神官査としてライサンとルークに仕えていた二人が、今のアシェイラ神殿のツートップである。  見目が青年のまま老いを止めた、あの頃のままのルークと違い、二人共年を重ね、壮年になってはいるが、その心根の真っ直ぐさ、能力の高さはあの頃と変わらない。  じっと二人を見つめ、それを認識したルークは、アシェイラ神殿が自分達がいた頃と変わらない雰囲気を纏っている事に安堵する。  リチャードは変態だが、神官としての能力は元々は高いのだ。シャルは元々真面目な神官査だったので、神官長補佐として器用に立ち回り、上手くやっているようだった。 「あれ? そういえば、セリクス大神官は?」  その場にいたもう一人、ずっとアシェイラ神殿で神官査を続けている古参の一人である彼は、そう言って、姿の見えぬ大神官を探す素振りを見せる。  ルパート・ジャクソン神官査だ。 「ああ、あいつなら、リュカを探しに行ったようだからな。すぐに来るだろう」 「セリクス神官を連れて来る位、僕らがやるのに、大神官も相変わらず自由な方ですねぇ」  相変わらずぽっちゃりとした体型のルパートは、自分の腹を軽く叩きながら、あはははと笑う。 「あの頃、よ~~っく、セリクス大神官とウインター大神官補佐、神殿内を追いかけっこしてましたもんねぇ」  今となっては懐かしい思い出です。といって頷くシャルに向かい、ルークは胡乱な目をして答える。 「俺は好きであいつを追い回していたんじゃないぞ。奴が仕事をサボるのが悪い」 「今は真面目にやってんの? ライサンの奴」  神学生であった頃からの古い付き合いであるリチャードは、気安い口調で旧友の名を呼ぶ。 「いや、今も相変わらずだ、あの馬鹿は。しかし、俺には奴を見つける為の最終手段があるからな」  そう言うと、ルークは自分の肩の上で居眠りをしている梟型のお世話役ぬいぐるみのふわふわの頭を右手で撫でる。 「あ、それがヘタ爺ですか? 可愛いですねぇ」 「例の玉主様が作ったっていう、あれ? すごい、本物ですか!?」  シャルとルパートが興味津々にヘタ爺を眺めていると、ノックの音が響いた。  コンコン 「入りなさい」  神官長としてよそ行きの口調でリチャードが声をかけると、ゆっくりと扉が開き、白髪の青年神官が姿を見せた。一瞬、ルーク以外の三人がライサンが現れたのかと錯覚するが、直ぐに間違いを認識する事になる。 「リュカ」  父親の顔をしたルークが、現れた青年を優しく抱き締めたからだ。 「久しぶり、ルー」  ルークの背に両腕を回し、しっかりと抱き返したリュカは久方ぶりの親子の抱擁をする。先程も自室に迎えに来たライサンと再会の抱擁を交わしたばかりだった。……というか、その事で言いたい事があるのだが。 「元気だったか? 今回はリベルタの賓客として招かれてもいるから忙しいが、時間を作ってゆっくり食事でもしよう。久しぶりにライサンの作る料理が食べたいだろう?」  大神官という高位の身分にありながら家事的能力が抜群に高いもう一人の父親、ライサンの作る食事は文句なしに美味い。 「そうだね。で……、その、ライなんだけどさ」 「お前の話も聞きたいしな。すっごく聞きたいしな」 「…………」  引きつった笑みを浮かべるルークが何を心配しているのか悟ったリュカは、両手を大きく広げて答える。 「ひどいな、父さんは。まだ僕が信用出来ないの?」 「信用しているさ。お前の性質も、能力の高さも。でも、こればっかりは、裏切られてばかりだったから仕方ないだろうが」
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