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 ルークが言いたい事を悟っていたリチャードは、リュカの擁護をすべく親子の会話に口を挟んだ。 「ルーちゃん、心配いらないよ。セリクス神官……リュカはずっといい子だったんだから! 僕らが知る限り、女の子に手を出してないよ! そう、僕らが知る限りは!」 「そうです、そうです! 神官には手を出しているようでしたが、女性には手を出していませんでした。懺悔室で何人かの神官に相談は受けましたが、全然大丈夫、許容範囲内です!」  それって、大丈夫と言えるのか?  ルークは内心そうツッコミを入れるが、リュカのこれまでの男関係や女関係の派手さ、手あたり次第なのを見てきていたので、これでも大人しくなった方なのだろう。 「でも、本当にそういうのなくなったよね、リュカ。リチャードやシャルが今話したのも数か月前までの情報だし。ここ数か月、そういった噂が全然ないよ。なんで?」  唯一ルパートは、最近のリュカの変化に気づいていた。 「僕は元々誠実な男ですよ、ジャクソン神官査」  超嘘くさい。  その場にいた者全員が即座に思った。 「それよりも……」  リュカは小首を傾げると、気になっていた事を口にした。 「ライなんだけど、少し用事があるって言って、どこかに行ってしまったんだよ。……どうしたらいい?」  その瞬間、室内にいるにも関わらず、皆の間を冷たい風が吹き抜けたのだった。  大神官の失踪。  大変な事のように感じられるが、ライサン・セリクス大神官に限って言うのなら、それは、よくある事だった。ルークはアシェイラ神殿で彼の神官長補佐をしていた時代からそれに苦労し、悩まされてきたのである。しかし、そんな彼の悩みを解消する手段が、ここ最近、ようやく手に入ったのだ。 「追跡機能? この、ヘタ爺にですか?」  シャルは驚きに目を見開きながら、ようやく目を覚ましたヘタ爺が頭を左右に振っている様を凝視した。  高速で頭を振る梟のぬいぐるみ。なかなか怖い光景である。夜中に見たくはない。 「ライサンのデータを入れてあるからな。王都内程の範囲ならどこにいるかすぐわかる」  ルークのその言葉通り、ライサンの居場所を察知したヘタ爺は大声でその場所を叫んだ。 「”アシェイラ城~、アシェイラ城~~、セリクス大神官は、王宮にいるヘタ~~~~ッ”」  それを聞いた面々は、ヘタ爺の予想外の大声に耳をやられつつも、驚きの声を上げる。 「は、はあッ? 王宮……!? 夕刻に行くんですよね!? まだお昼時ですけど!?」 「なんだろう。相変わらずよくわかんないね、セリクス大神官って」 「ど~するの? ルーちゃん」  シャル、ルパート、リチャードの順に声を上げた三人に見つめられ、ルークは少し考え込んだ後、それを口にした。 「とりあえず、俺とリュカで連れ戻してくる。お前達は俺達に同行してきた者達の世話を頼む」 「「はい!」」 「おっけ~」  その、まるで昔に戻ったような懐かしい光景に、ルークは小さく笑ったのだった。  そして、ヘタ爺の案内を受け、リュカと共に訪れたアシェイラ城王宮内にある一室の前。 「”ここヘタ~、ここにいるヘタ~~”」  バサバサ翼を羽ばたかせながら主張するヘタ爺の様子から、中に奴がいるのは間違いあるまい。ルークは一つ深呼吸をして、扉を大きく開け放つと同時に、いつものように怒鳴り声を上げた。 「うおおおおらあああああッ、ライサンッ! ようやく見つけたぞ! 目を離した隙に逃げやがって、この阿呆がああああああッ!」  バターーーーーーーーンッ  次の瞬間、ルークは怒りに染めていた目を見開き、唖然とする。  目的の人物は、いるにはいた。  そう、いるには、いたのだ。  ライサンは一人ではなく、もう一人、育ちの良さそうな若者と一緒におり、彼らの唇は深く重なっていた。  つまり、自分の番相手でもある駄目上司は、翠緑の髪の青年と口づけを交わしていたのである。 (なんだ? これは、う、浮気か!?)  混乱のあまり固まってしまったルークと違い、直ぐに行動を起こしたのは、彼の後ろにいたリュカだ。  リュカは室内に飛び込むと、緑髪の青年の肩を乱暴に引く。そうして、無理矢理にライサンから引き剥がした相手の名を、慌てるあまり敬称をつける事を忘れ、いつものように呼んだ。 「セフィランッ!」  今まで自分が口づけていた相手の色よりも濃い、褐色の色の眸が間近にあり、セフィランは驚きに目を見開くしかなかった。
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