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誰か見てる
「この道はね、最近事故があったのよ。この先を進むと細い道で車がやっと一台通るくらい。そして崖になってる。先日、この道をトラクターを走らせてね。運転を誤らせてそこから崖に落ちてしまったの。そしてそのままトラクターの下敷きになってしまって……ちょっと悲惨な事故だったのよ。ご家族が言うには普段通らない道なのになんでこの道を通ったかって……」
みんなぞっとして目を見合わせた。
「もしかして私、連れていかれそうになったんじゃ!?」
「かも知れない。だって孝太郎さんが急に寝落ちしたんでしょう?それも揺さぶっても起きないくらい……」
「うん。それに……身体が勝手にそっちに向かうような気がしてね……」
「そっか。でも多分だけど、止めてくれたよ。父さんが……。あなたを必死にね。そっちに行くなって」
「かも知れない。不思議と止めようとする力に懐かしさを感じたから」
運転を孝太郎に代わり、バックでその道を戻った。
本当のところはどうか分からない四人だった。しかし、今でもあの感覚は不思議と分からないという佐江。まるで二人に声を掛けられていた気分と言う。
今も定期的に墓参りに行ったりする。普段は明るい昼間だからさほど気にしないが、佐江はお盆の時期になると違う道を迂回するようになった。
「だって、夜中あの道通る度、誰か見てる気がするんだもん。手招いてる気がして……」
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