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お見送り
この辺りでは深夜に先祖を見送るのが慣わしだった。今年のお盆もこれで終わりになる。水田家は母の依子、息子の孝太郎で車に乗り込み、少し離れたお墓まで父、亮の見送りをする。
娘の佐江はすでに結婚していて旦那の良樹と後から現地で合流する予定だ。依子が小さい提灯の蝋燭に火を灯す。そしてこのまま水田家のお墓へと走る。時間にして十分かからない程度だ。
「もうこうやって見送るのも何回目かな」
「そうね、十五回目かしら」
「早いもんだよね」
「早いわね。ちょっと孝太郎、慎重に走らせなさいよ。提灯揺らすと危ないから」
「分かってるよ」
車の中、提灯の火は蝋燭をゆっくり燃やしていく。ゆらゆら揺れて別れを惜しんでいるようだった。
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