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立ち往生
「じゃあ先に帰るわね」
アルコールの入っている良樹は運転出来ないため助手席に、佐江が運転。この道は何度も通っているため佐江にとっては細くてもすいすいと車を走らせる。元々の性格もあるのだが。その後を依子を乗せて孝太郎が運転した。急な下り坂を三百メートルほど一気に下りそこから登り坂となる。真昼の夏にこの坂を歩きで登り降りすれば息を切らし汗だくになるのは間違いないほどの急勾配だ。佐江の後をついて行くように車を走らせる。
すると佐江の車が普段とは違う方向にハンドルを切り曲がった。
「あれ? あっちは……」
「あの道違うだろ?」
二人して顔を見合わせた。
「あの道はちょっと……」
最近あったあの出来事を思いだし依子は声を荒げた。もちろんなんとか道は繋がっていて抜け出すことは出来るがその道は補整も整備もしてない。そしてさらに道は細く脇は崖のようになっている。
「ちょっと危ないよ。なんであの道に入ったの!」
車は立ち往生したように止まっている。
「孝太郎! ちょっと追いかけて。よくないわよあの道──」
焦るように依子は孝太郎を急かした。立ち往生する車のすぐ近くに車を止めると依子は慌てたように佐江の車に向かって駆け出した。
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