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「えっ?」
驚きながら目頭に手を当てている女の子。
「ちょっとでいいんだけど、ダメならいいんだけど…」
少し彼女は考えていたが、千円札の効果か俺の作り笑顔の効力かは不明だが、彼女は俺にギターを手渡してくれた。
「ありがとう」
受け取った俺は、まずは微妙にあっていないチューニングから始める。
俺はそれを何気なく嫌味にならない様にやったつもりだが、女の子は自分でも気になっていたのだろう。
「やっぱり少し変ですよね」
恥ずかしそうに笑う、その笑顔が愛らしい。
「ほんの僅かだけど」
俺は、右手の親指と人差し指の間を1mmだけ開けて、少しだけのポーズを取って見せるが、
「やっぱり…」
それに肩を落とす女の子。
俺の気遣いも役には立たなかったようである。
普段、女の子はギター専用のチューナーでやってるらしいが、今日はそれを持って来るのを忘れたらしい。
俺は女の子が持っている歌本から、彼女の知っていると言う曲を選んで弾いて見せる。それに彼女が歌い、俺がコーラスを入れたり、適当にハモってみたりで2曲ほど楽しんでみた。
スーツ姿の俺は、彼女と釣り合った服装ではないので、周囲からはどう映っているのか分からないが、俺たちの周りには3人程立ち止まっていた。
「ギター上手いですね。やってるんですか」
「趣味で少しだけ」
女の子の褒め言葉に俺は有頂天ながらも謙遜。ガールズバーの何倍も楽しくなってしまう。
「全然少しじゃないですよね、少しでそんなに上手かったら天才過ぎます。
良かったら私のオリジナル曲があるのですけど、弾いてもらえませんか?」
女の子がそんなことを言い出した。
「楽譜はありますか?」
やる気満々な俺。
「ないですけどコードは3つだけですから」
そこで俺は女の子に一回弾き語りをしてもらう。
これで今日この曲を聞くのは3回目。曲の進行は単調だし曲調も理解したので、まあ間違わずに弾ける自信はある。
「大丈夫そうです」
俺はそう言って、再び彼女のギターを受け取り適当にアレンジをして弾き始める。
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