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ただひと降りの雨に過ぎない
通り雨の長さは
通り雨によってまちまちだ。
けれどそれは少なくとも
いや、長くとも
通り雨と呼べる程度の
わずかな長さではあるのだろう。
同じことだ。
同じことしか言っていない。
私たちは誰も彼も
ただひと降りの雨に過ぎない。
ざあっ、と。
あるいは、ざあざあっ、と。
せいぜいその程度の擬音で
済んでしまう程度のひと雨だ。
あとには晴れ間が広がり
虹がかかれば良い方だけど
それもすぐに日が暮れて
亡霊みたいに消えていく。
美しいね。
いいじゃないか。
誰も覚えていないけど。
あるいはうっかり
濡らしてしまった人だけが
恨みがましく覚えているだろうか。
「とても迷惑だった」と。
でも分かっているんでしょう。
雨を恨んでも仕方無いこと。
特に、過ぎた雨を。
「そしてあなたも雨なのです。」
違う、と?
断じて違う、と。
誰も濡らしていないと言い切れるのならば
なるほど、あなたは雨ではないのでしょう。
そんな雨はありませんから。
いずれにせよ、と
私はきちんと傘を差して
濡れないようにしながら思う。
雨を恨んでも仕方が無いと。
ただ適切に
対処をするしかないのだと。
終わりはあるのだから。
過剰に考える必要はない。
過剰に急ぐ必要もない。
ただ忘れてはならない。
私たちは
ただひと降りの雨に過ぎない。
今だけに存在する
ただひと降りの雨に過ぎない。
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