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風が吹くのと変わらない
私が通る前に
この道を通った誰かのことを
この道は 覚えているだろうか
私は私を追い越した風を
ただの一つも覚えていない
何にせよ
私も何も
風が吹くのと変わらない
後に残るものは何も無く
残ったとしても何も無く
ただ吹いているときだけが
存在しているといえるとき
私を過ぎた無数の風は
どこから
どこまで
一つの風だったのだろう
何にせよ
すべては
風が吹くのと変わらない
それは
太陽が明るいことのように
できないことがあることのように
誰もが死ぬことのように
誰もが知っていることで
ことさら
今さら
わざわざ
言うまでもないこと
当然のこと
普通のこと
風が吹くのと変わらない
私が
私だけが
それを忘れて不安になる
風が吹くのと変わらない
雨が降るのと同じこと
そう繰り返して
全然
大したことじゃないと
繰り返して
安心する方法を
私はまだ知っている
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