凪ぎ……

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凪ぎ……

   醤油の焦げた匂いが、鼻先を掠めている。   「お母さん、起きて……お父さんが、タコ焼き、買ってきてくれた……」  娘に揺り起こされた小夜子ほ、ハッと身体を起す。  夏の陽射しが強く、眩しい。  そして、無邪気に笑う愛娘が差し出すタコ焼きを頬張った。  あれから10年……    小夜子は、もう有希子の死を悼めない。    
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