1-1チュチュは見習い女神

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1-1チュチュは見習い女神

 チュチュの朝はいつも、体操から始まる。 「いち、にー、さん、しー」 チュチュは大きな声を出しながら、体を前後に動かし、そして、足を曲げたり している。 これは、パパの趣味で、パパが空へかえってからも続けている。 マンションのベランダから見る景色は、いつも活気があって、やる気を出させ てくれる。 「毎日、暇だね」 大きなあくびをしながら、昨日届いた、メールマガジンに目を通す。 これも、いつものこと。 同じことを、ここ20年以上、やっている。 去年までは、大学に通うという仕事があったのだけれど、今年は、それもなく なってしまった。 「あー。あー」 チュチュはもう一度あくびをした。 「へえ。空では、もう雪が降っているのか」 メールマガジンには空の世界に雪が降っている写真が動画でのっている。 「そりに乗りたいな。まだ、サンタのそりはメンテ中って出てたし」 チュチュはゆっくりと、大好きなクロワッサンに手を伸ばした。 「ない!」 かごの中には、トースト用のパンしか入っていない。 「くそー。今度絶対に、かえしてもらう」 チュチュは昨日の夜に遊びにきた、天使3456号のことを思い出して、つい 汚い言葉をいってしまった。 ママがいるときには、口のまわりが痛くなる魔法がどこからともなくやってき て、手でほっぺたを押さえていたが、今は、1人暮らし、言いたいほうだい だ。 「そう言えば天使3456から聞いた、トトばあさんが引退って」 チュチュのおばあさんのトトばあさんが、引退するってことは、トトばあさん の仕事はママが引き継ぐのかな、なんてことを気楽に考えているチュチュだ。
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