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『動物病院早く!』
『ちゃんと抱っこして!』
普段だったらウルセーとか叫んじゃうところだけど、俺は本当に頭が真っ白になってた。だめなんだよ、昔からゾンビ映画とかグロいやつめっちゃ苦手。俺はもう完全にパニックだ。
「だっこ!? いやちょっと待ってくれ、動物病院検索するから一旦配信切るわ!」
なんで配信切ったんだ、とこの時自分に突っ込む余裕なんてなかった。動物病院を検索して急いで連れて行った。
一旦落ち着いたからもう一回配信をした。そうしたらさっき観てた人たちがすぐに集まった。
『どうなった!?』
そんな感じの心配の声が上がるので、俺は椅子に横に寝転がりながら何とか説明する。
「とりあえず病院には連れてきた、今治療中」
『治療してる様子も配信しろカス』
まだいたのかアンチ。だが猫好きの人たちから反感を買ったらしく、見なければいいじゃんとコメント内で喧嘩が始まっている。
『声元気ないね、大丈夫?』
「獣医さんに預けたら、ほっとしてその場でひっくり返って今休んでる」
ぼそぼそとしゃべる俺の声にアンチは「はいはい嘘」「再生稼ぎ必死すぎ」と言ってくるが、心配する人たちも結構いる。カメラを自分に向けて映すとなんともまあ真っ白な顔だ、俺。
『顔色悪い!』
『いい加減アンチ消えろ、マジうざいんだけど。演技で顔色変えられるかよ!』
ある意味大盛り上がりとなって気がつけばライブ配信は五百人以上になっていた。マジかよ動物助ける様子ってこんなに集客力あるのかメシうま!……と思う余裕はない、吐きそう。ウジの記憶が離れねえ。
治療が終わったということで呼ばれた。さすがにこの状況で獣医に配信していいか、なんて聞けない。炎上する。
配信を続けたままスマホはポケットに入れて音声だけ届ける。慌ててたから配信切るの忘れたってことにしとこう。案内された子猫は包帯でぐるぐる巻きだった。
「この子が生き残れる可能性は限りなく低いです」
へーあっそ……。いやなんでだよ?
「治療してくれたんですよね?」
「治療したから必ず助かるわけではないですよ。目の負傷、骨折、栄養失調、脱水症状、おそらく複数の感染症にもかかっています。普通は生きられません」
普通の飼い猫でさえ昨日まで元気だったのに、突然死んでしまうこともあるらしい。子猫でこの重傷は絶望的ってことだ。
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