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翌日動物病院へ朝一に行った。今回もこっそりポケットにスマホを入れている、配信中だ。
「残念ですが」
「え?」
それしか声が出なかった。ついさっきまで生きてたのに、たった今死んだと言うのだ。俺は子猫が入院しているケージに案内してもらった。
別に過ごした時間は短いから、こいつに愛着なんて湧いてないし。悲しい気持ちはないわ。……ないったらない。
まるで棒切れのような仔猫。そっと顔を撫でて、鼻をちょん、と触った。
ぱく。
指を食われた。
「ひぎゃああ!? 生き返ったあああ!」
「え!?」
大慌てで獣医と助手がすっ飛んで来た。そしてなんかペタペタつけていろいろ処置をして。
「信じられません、息を吹き返しました!」
助手が目をきらっきらさせている。
「運命ですよ、これは」
「いや、俺鼻ちょんしただけ!」
「匂いが脳に刺激を与えて、生きたいと思った行動かもしれません」
やばい、この流れ俺が飼わなきゃいけなくなるじゃん、配信してるし! つーかあんた俺に飼わせようとしてねえか!? トイレ行ってスマホを見れば案の定大盛り上がりだった。
「え、映像ないから分からんと思うけど! 今さ!」
『いやもうわかってる』
『声でかいし』
あっそうですか。でも良かった、とか泣きそうってコメントも多い。
結局テリヤキは俺が飼うことになった。まあ、配信から銭投げもらってるから多少はエサ代になるか。拭くだけのタオルシャンプーで綺麗にしたら白猫だとわかった。照り焼き色じゃなかった。
まあいいか。動物保護はアンチつきにくいし、これはいい金になる。お涙頂戴ネタやりゃバズるだろ。
なんて思っていた時期が俺にもありました。
『子猫は自分で排泄できんから、肛門軽く叩いて』
「ぎゃあああ! 下痢となんか芋虫でてきたああ!?」
『寄生虫! 病院行け!』
「俺グロいのだめだってばオエエエ!」
『お前が吐くんかい! お前も医者行け!』
獣医に見せたら寄生虫駆除の処置と、飲み薬もらった。
「薬飲まねえし吐き出す! 飲ませようとすると暴れる!」
『薬嫌がるのは普通よ。それでも飲ませるしかないんだよ』
「吐いちまうってば!」
『手本見せりゃええやんけ』
「あ、そっか!」
『おいこら』
『フリすりゃいいだけだし』
「おえええええ! まっず!」
『本当に飲むなよ!』
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