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飛び出てた目は奇跡的に治った、骨折も完治した。テリヤキはすくすく育ってる。なんやかんや登録者数も増えた。ま、収入は餌代と治療費に全部消えるが。
いつの頃からだろうか。こいつが良い金になるなんて感情がなくなっていたのは。大変なことたくさんあるけどな。
今では俺にかまってくれないとちょっと寂しささえある。テリヤキを呼んでる時のお前の猫なで声キモイとさえ言われる。
テリヤキを拾って三ヶ月が経った。普通に餌とか食べられるようになったからいよいよチュルーのデビューだ。
スティック状の餌で手元からペロペロと舐めてくれるおやつとして大人気。腹の調子整うまでチュルーは早い、と言われてたから我慢してた。
で、もういいだろうとチュルーを買いに行って。玄関を開けたところから配信開始。
「ただいまーテリヤキ」
ウキウキとしながら部屋に入るが。部屋の中は竜巻でも来たかのように荒れていた。窓が割られて荷物がぐちゃぐちゃだ。誰がどう見ても空き巣が入ったような形跡なのだが。
「テリヤキ!?」
俺は通帳とか銀行のカードとか。そういうものよりも先にテリヤキを探していた。
「いねえ、テリヤキいねえよ!」
『おちついて! 警察!』
みんなからのコメントで慌てて警察に連絡した。電話をしながらもずっと部屋の中を探す。最悪の可能性が頭をよぎった。
「これ、泥棒が入ってきてパニックになったテリヤキが外に出ちまったんじゃ……」
『その可能性はある、かも』
頭が真っ白になった。ここら辺は交通量も多い。警察が俺の家に来る前に俺は外に飛び出していた。
結局警察の対応もしなきゃいけないから周辺しか探せなかったけど。ひとまず道路で轢かれている様子は無い。でも鳴き声も聞こえない。
警察が到着して部屋の様子を確認する。もしも子猫がいたら教えてくださいと必死に頼んだ。俺も部屋をもう一回探すが、やっぱりいない。
「死んじゃってたらどうしよう」
配信しているのも忘れて俺はそうつぶやいていた。悪い想像しか湧いてこない。見つけた時のウジだらけの姿がよぎる。
『しっかりして! 迎えに来てくれるの待ってるよ!』
『テリヤキを助けられるのはお前だけなんだぞ!』
そうだ、こんなところで呆然としている場合じゃない。もう一回周辺を探しに行っていいかと警察に許可をもらおうと玄関に向かったところだった。
ぎゃお!
「テリヤキ!?」
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