猫で再生数稼ぐぜ

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 すぐ近くからテリヤキの鳴き声が聞こえた。この鳴き声は予防接種をしたときの叫びと同じだ。あの後俺に猫パンチしまくって怒ってたからよく覚えてる。  どこから聞こえた、つーか聞こえたのここじゃねえのか。アパートの、隣の部屋。  みゃぎゃー! 「テリヤキイイイイ!」  俺は玄関を思いっきり蹴り飛ばしていた。鍵がかかっていなかったらしく外開きのはずの扉は思いっきり中に押し込まれる。ぼろいからなこのアパート。  中にいたのは小太りの男。驚いてこちらを振り返る男と、床でぐったりとしている……テリヤキ。頭が真っ白になった。 「あああああ!」  男を思いっきりブン殴ってテリヤキを抱っこする。呼吸を確認すると息はしているが、意識がない。状況から考えてこいつテリヤキを床に叩きつけたんじゃないのか。 「ちょっと待ってろ」 「な、なん――」 「後で殺す」  顔面に蹴りを入れて俺は動物病院に走った。  テリヤキは無事だった、検査結果は異常無し。脳震盪だろうということだ。  警察の調べで俺の部屋に侵入したのは隣の男だということがわかった。俺とテリヤキが最近人気の子猫チャンネルだと気づき、欲しくなった。  当然だがテリヤキは暴れて噛みついた。痛くて振り払ったら床に落ちたらしい。それでもテリヤキが死ななかったのは奇跡だ。  警察の事情聴取でそれがわかったのは良いのだが。俺は不法侵入と他人に暴行を加える様子が生配信されたわけで。しかも殺すとまで言ったから俺も警察に取り調べを受けた。気持ちはわかるけどやった事は犯罪だよ、とめっちゃ説教された。  当然だが俺のチャンネルはアカウント停止。すぐに別のアドレス使って、テリヤキ部屋(仮)を開設したものの。軽犯罪者のチャンネルなんて、炎上する未来しか見えない。 「テリヤキ。明日から俺たちはどうやって生きるか」 「みゃお」  テリヤキはすぐ目を覚まして退院だ。今回の治療費を支払うと俺の貯金はほぼゼロになる。俺一人が生きていくのならまだしも。テリヤキと一緒に暮らすには金が足りなさすぎる。 「ま、とりあえず俺が一日二食から一食になりゃいい話だし。稼ぐ方法探さないとな」 「みー」  そんな会話をしながら会計待ちをしていた。すると獣医さんが部屋から出てきた。そして手に持っていたスマホに何かを入力してその画面を俺に見せる。 『働き口ならあるよ』  それは俺の生配信中へのコメント欄だ。慌てて配信を見てみると同じコメントが流れている。 「え?」  待って、まさかこの人。このコメントをしてくれてるアカウントは。 「どうも。訓練されたプロ下僕です」 「ふぁ!?」
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