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今や動画の再生数で稼ぐ時代となった。俺も最初は良かったが、今は伸び悩みとっくに飽きられている。こいつ終わったな、ってコメントが目立つようになって毎日イライラする。
「くそ、いねえな」
俺はあるジャンルに標的を絞ってうろつく毎日だ。俺が目をつけたジャンル、それは動物保護。
今にも死にそうな動物を保護して保護センターに連れて行く。そして数ヶ月経って元気になった様子を放送する。これだけで一回の動画で二万再生はいける。俺が育てるわけじゃない、保護して元気になったところまでだ。あとは知らん。
しかし意外と野良がいない。クソ、変なところでマナー向上しやがって。この辺にはいないか、場所を変えよう。そう思った時「み……」と蚊の鳴くような声が聞こえた。
「お!? きたきた!」
俺は急いでスマホを出す。発見するところから録画しないとな。いかにも偶然通り掛かりましたみたいな風を装って。
なんか猫の鳴き声が聞こえたんだけど、とわざとらしく言いながらガサガサと声のした方を探す。そこは空き家だ。物置小屋なのか家なのかわからん。
ふと、ライブ配信の方が面白いかなと思った。だってさっきの鳴き声いかにもくたばりそうなか弱い声だ、盛り上がる。
ライブ配信に切り替えてタイトルも目を引くものにする。「捨て猫がいるっぽい、猫のことわかる人助けて」これだったら猫好きなやつはとりあえず見るはずだ。思った通りあっという間に五十人に増えた。このままいけば百人超える。
俺のキャラを知ってるやつは再生稼ぎしてんじゃねーよコメントしてくる。だがそれ以上に猫を心配する猫好きカモどもがいろいろコメントをくれる。
そしてスマホのライトをつけて、とうとう隠れてる猫を見つけた。しっぽだけ見えるので手を突っ込んですくいあげる。よおし、撮れ高ゲット……
「おわあああ!?」
俺は思わず悲鳴をあげていた。なぜなら子猫は右目が飛び出していたのだ。そして体中にウジが湧いている。
「どっどどどうしよう!? 目がやべえことになってる! マジで誰か助けて、どうしたらいいんだよこれ!?」
まあ骨と皮状態だろうなと思ってたら予想の十倍でビビる。しかも後ろ足二本とも変な方向に曲がってる。
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