上を向けば阿呆

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「ジ・エンド」 「やめろ……!!」  力が入らん中、ワイはロープを使ってなんとか立ち上がろうとする。せやけど、間に合わんかった。ワイの叫び声も虚しく、アルファはワイの顔を見てにやりと笑った。社長はさっきよりも高く飛び上がったツームストーン・パイルドライバーをもろにくらい、マットには頭部が突き刺さる。力無く倒れる社長の姿を見て客は悲鳴を上げ、会場はブーイングの嵐に包まれた。  壮大なドラムスに女性の悲鳴、それに銃声といった、禍々しいアルファのテーマ曲が会場に鳴り響く。  そんな中、高笑いするアルファの顔が憎たらしく、何もできんかった自分が悔しかった。   *  ミル・ドラグーンが負けてから二ヶ月近くが経った。大怪我をした社長はしばらく入院が必要で、もしかしたら復帰も難しい……なんて聞いたけど、ワイは絶対戻ってくるって信じとる。  それよりもや、問題は奴や。あれから、すぐに政権がアイツに移った。今までお笑いマッチで客を笑かしよったのに、今じゃマジの試合ばっかりで怪我人も続出。試合というかはイジメやな。一方的に攻撃して、力の差を見せて、そしてリスペクトの一つもない。あれじゃ殺人ショーと何も変わらん。  プロレスっちゅうのはもっとお互いが技を受けて耐えて耐えてほんで自分の力で勝利を掴み取る。どっちが本当の男なんかを決める、そんな激熱なスポーツやと思っとる。せやから、アルファがやっとる試合はプロレスとは思えへんし認めん。  アルファは社長との試合の後に「しばらく選手と団体の面倒を見ろって頼まレタ」なんて言いよったけど、未だに信じられん。本当は嘘かなんかやと思っとる。 「難しい顔しとるな野猿」 「社長」
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