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その流れるような動作にドキッとした。そして何をいわれるのだろうと構えているとそのまま手を引っ張られ抱き締められた。
「統理、さん?」
「正直に話してくれてありがとう」
「っ、そ、そんなの」
当たり前です──といいたかった言葉は統理さんの唇で塞がれ発することが出来なかった。啄むような軽いキスから徐々に深いものになって行き、気が付けばその場に押し倒されていた。
「と、うり、さん」
あがる息の中、辛うじて統理さんと名前だけ呼ぶ。そんな私を優しげに見つめながら「ごめん、今、どうしようにもなく梨々香のことが欲しい」と囁かれた。
「梨々香が過去を正直に話してくれたのは嬉しい。だけど梨々香の初めてを手に入れた男を実際に見てしまった今、俺の心の中は悔しさでいっぱいになっている」
「!」
「嫉妬しているんだよ、あの男に」
「……統理さん」
「今はもう梨々香の全ては俺のものだというのに……それでもそれを実感したくて今、梨々香のことが欲しくて堪らない」
「……」
(統理さんが嫉妬……)
不謹慎ながらもその言葉が私に例えようにもない幸福感を与えた。
憧れ続けた最愛の人に嫉妬される。それがこんなに甘く疼く感情だとは思わなかった。そう思うと同時に、統理さんにそんな思いをさせてしまった罪悪感も湧いた。
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