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窓から見える空は漆黒になっていた。
統理さんに愛されてからもう何時間経ったのか──時間の感覚も体の感覚もなく、ただ私はだらしがなくベッドの上で統理さんに優しく抱きしめられていた。
「ごめん、無理をさせたね」
「いえ……大丈夫です」
まだほんの少し疼く体に振り回されていたけれど耳元で囁かれる統理さんの声が妙に心地よかった。
しばらく甘い余韻に浸り少しずつ物事が考えられるようになった頃、統理さんがボソッと呟いた。
「だけどなんであの男、あそこにいたんだ」
「……え」
「梨々香の元カレ。どうしてピンポイントであの店にいて梨々香と鉢合わせたのかが不思議で」
「……」
「だってずっと会っていなかったんだろう? しかも梨々香はたまたま帰京したってだけで正確な情報が解らない中で何故──」
「……多分ブログ、です」
「え」
統理さんの疑問を答えるように小さく口を開いた。
「私がブログにこの日に東京へ行くって書いていて……。詳しいことは書いていませんけれど帰ったら事務所に寄る、みたいなことは書いていて……」
「じゃあ何か、あいつは事務所を見張っていて其処から出て来た梨々香をずっとつけまわしていたってことになるのか?」
「ちょっと怖いですけどそう考えるのが一番納得出来るというか……」
(確かあの時先生、私の検索を色々しているって言っていたし)
その流れで私のブログも読んでいた可能性は高い。私の後を付け回し、偶然を装いあのお店で声をかけて来たということなのだろうか。──と、そんなことを考えていると突然統理さんが上体を起こした。
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