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（久遠寺智里が作った曲じゃないって）
それは一体どういう意味なのだろう。私が訳が解らないという表情をしたのを見た統理さんは解り易いように話してくれた。
「つまりこの曲は久遠寺智里ではなく久世統理として発表したいということ」
「……え」
「作詞は久世梨々香、作曲は久世統理。初めての夫婦共同作業ってやつだよ」
「！」
まさかという気持ちが湧いた。統理さんが本名で活動するなんて考えたこともなかった。そんな思ってもみなかった展開になっていることに様々な感情が噴き出して来ていた。
「梨々香？ 大丈夫？」
「……あ……はい」
「もしかしてお気に召さなかったかな。君はやっぱり久遠寺智里名義での発表した曲の方が嬉しいのかな」
「っ、とんでもないです！」
「！」
思わず大きな声が出てしまい統理さんは勿論、私自身も驚いてしまった。
「梨々香？」
「私は……嬉しいです」
「……」
「名前なんてなんだっていい。ただ私は統理さんの……統理さんが作った曲が欲しかったんです」
「……うん」
「ずっとずっといえなかったけれど、統理さんに私だけの曲を作ってもらいたいと思っていて……」
「うん。それはちゃんと解っていたから」
「え」
統理さんが事も無げにいった言葉に一瞬固まってしまった。
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