212人が本棚に入れています
本棚に追加
ずっと統理さんにいえなかった悩み。
(それを統理さんは気が付いていたってこと!?)
「解るに決まっているよ。他でもない愛おしい妻のことだよ? 梨々香が何を思い悩んでいるかなんてお見通しだ。だけど知っていても俺から切り出してやれなくてごめん。なんかさ、梨々香から強請られたくて待っていたところがある」
「え」
「甘えて欲しかったんだよな……梨々香から曲を作って欲しいって。だから俺からいうことが出来なかった」
「甘えて…?」
「呆れた? 大人げないって」
「そんなことはないんですけれど、統理さんでもそんなことを考えたりするんですね」
「君は俺を何だと思っているの。俺はそれほど余裕のある大人じゃない。歳下の妻に甘えたいという気持ちがありながらもそれを恥ずかしいと思ってしまうような器の小さい普通の男だよ」
「……統理さん」
私が感じていた大人な統理さんの違った一面を見た気がした。
(そうか……いつも私が甘やかされていると思っていたけれど……)
統理さんも私に甘えたいと思ってくれていたのだ。それを知った途端、心の中にあった悩みが晴れるのを感じた。
「でもまぁ、帰京した時にあった出来事をきっかけに俺の方が我慢出来なくなったんだけどね」
「帰京した時にあった出来事?」
「梨々香の元カレに会った事」
「……あ」
それをいわれて気が付いたことがあった。
最初のコメントを投稿しよう!