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「久遠寺智里の時とは違う。俺の五感全てで味わった梨々香との甘い日々と愛を込めた曲になった」
「……え」
それを訊いてまたもやハッと気が付いたことがあった。
(久遠寺智里の時とは違うって……それって)
この数日間、統理さんの仕事の仕方が変わったと思ったことがあった。いつもと違っていたこと、それは──
(やたらと統理さんに愛されていた!)
仕事期間中だというのに私は毎夜統理さんにベタベタに愛された。いつも私が意識を失うまで濃厚な行為は続き、それは仕事をしていない日と同じくらい──ううん、それ以上に甘い時間を過ごした。
「久世統理として作る曲は久遠寺智里の時とは違う。俺の中の梨々香愛しているゲージが常にマックスじゃなきゃ作れないんだ」
「愛しているゲージ……ですか」
だからあんなにも私は愛された続けたのかと、ようやく疑問に思っていたことに対する答えが明かされた。
「勿論セックスするだけが曲作りの活力になる訳じゃない。普段の何気ない夫婦としての生活全てが俺の中で創作の糧になっている」
「……」
「こんな風に音が溢れて来たことは初めてなんだ。だから自分でも少し戸惑っているところがあったけど、でも久世統理として世に出るには最高の曲が出来たと思う」
「~~~っ、統理さん!」
もう何もいえなかった。嬉しい気持ちも幸せな気持ちも統理さんに感謝する気持ちも……今感じている気持ちを言葉にして伝えるのが難しいくらいに色んな感情に支配されてしまって、結局ただ統理さんの名前を呼びながらその大きな体にすがるように抱きつくしかなかった。
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