Episode.7 愛の歌

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「それよりも梨々香、気分はどう? 大丈夫?」 「はい、今日はとても気分がいいです」 「そう、よかった。気分が悪くなったらすぐにいうんだよ」 「ありがとうございます」 統理さんの気遣いに更に気持ちは晴れやかに向上した。幸せな気持ちが充満している場所にそっと掌をかざした。 (君のパパは世界一優しくてとっても素敵だね) 統理さんとの愛の結晶がお腹に宿ってから5か月。時折酷い悪阻に襲われ今回の取材オファーに私は同行出来ないかと思われたけれど、不思議とここ数日はすこぶる調子が良かった。 (この子も応援してくれているのかな) 私と統理さんの新しい門出になるかも知れない仕事を心置きなく受けることが出来るようにと気遣ってくれたのかもしれない。 統理さんがいってくれた『妻になっても母親になっても梨々香は好きなこと、やりたいことを続ければいい』という言葉に支えられ母になることを決意出来た。 私は欲張りだから統理さんの妻にもなりたいし、子どもも欲しいし、そして統理さんの作った曲を歌い続けたい。 そんな全ての望みを叶えてくれるのは今、隣で鼻歌を奏でている統理さんだ。 「ん?」 「……いえ、なんでもないです」 私の視線に気が付き統理さんが声を掛けるけれど思わず見惚れてしまっただなんていえずに誤魔化す。 だけど統理さんを誤魔化すなんて私にはまだまだ早いようであっさり白状させられてしまう。 私がどれだけ幸せであるかを告げれば統理さんだって照れて困ると分かっているのに。 (あぁ……もう、堪らないなぁ) 私の頭の中には統理さんと共に奏でる幸せな愛の歌がいつまでも鳴り響いているのだった──。 蜜月狂想曲-Honeymoon Rhapsody-(終)
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