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元王女の処遇
玉座の間に連れて来られたジョゼフィーナなぱあぁっと顔を輝かせてフィーロを見つめる。
「あの……っ、フィーロ陛下!私はランゲルシア王国の王女ジョゼフィーナと申します!どうぞジョゼとお呼びになって?」
いやいやいや、今何が始まったの!?自己紹介!?まさかこの場で自分を売り込んでいるのだろうか……。いや、でも私もフィーロも知ってますけど?知ってて連れて来させたのだけど。
「わたくし決めました!帝国は属国として統治者を派遣した際、王家の姫を妃に迎えるのでしょう?それでわたくしだけ生かされたのね!いいわ、わたくしあなたのこと気に入りましたわ!わたくしを妃になさい?」
あの兄2人にこの妹。うん……相変わらずよね。ジルクの婚約者だからと執務を丸投げにされた際にしつこく邪魔をしてきて、大事な書類がおじゃんになったこと多数、忙しいのに無理矢理茶会に招かれ熱い紅茶をかけられたり、笑い者にされたこと多数。
因みにその際笑い者にした令嬢は何故かフィーロがリストアップしており、間違いないか確認された。
その後フィーロが妙に笑顔だったのが気になるが……。しかし今は目の前のジョゼフィーナだ。
まさかフィーロはジョゼフィーナの言うことを飲んだりしないわよね……?
不意にフィーロの方を向ければ……冷たい表情が既に氷点下に突入していた。
そのシュウシュウと見える冷気は……幻覚……?また神降ろしは……してないと思うのだが。
「貴様に私の名を呼ぶ許可を出してはいない」
「……っ」
まさに大陸の覇者イグナルス帝国の皇族と言わんばかりの覇気に、さすがのジョゼフィーナも圧倒されているようだ。
「それから私の妃はロゼだけだ。貴様は要らん」
そうフィーロが冷たく告げると、ジョゼフィーナはふるふると肩を震わせ青い顔で俯く。諦めてくれたの……かしら……?しかしそう思ったのも束の間で、次に私をキッと睨む。
「何で……何でロザリアなのよ!私の方が高貴な血で、それから美しいわ!ロザリアなんかより私の方が……っ」
「黙れ」
玉座の間の空気が、凍り付いた。
「貴様がロゼに何をしてきたか、知らぬとでも思ったか」
「な……なにも……私は……王女、だから」
王女だから何をしてもいいと思っていたのなら……この子は王族として相応しくないだろう。
そしてイグナルス帝国が皇子の伴侶とすることも限りなくゼロに等しいのだと、今なら分かる。
「反乱分子ではないのなら平民落ちでそこそこの修道院で済まそうとも思ったが」
「へ……平民……平民なんて嫌よ!私はお姫さまでいたいの……!キレイなドレスを着て、宝石を身に付けて、煌びやかな舞踏会で踊るの!」
「そんな役立たずはいらない」
「……っ」
慈悲の念など一欠片もなく告げられる事実に、ジョゼフィーナがまた俯く。
「喜べ。お前はただの平民落ちでは済まさん」
あの……フィーロ……物凄い恐い笑みを浮かべていないかしら……?
「平民落ちの上、生涯修道院で過ごせ。戒律の厳しい帝国の流刑地にある修道院だ、逃げ出せるとは思うな」
一体どんなところなのかしらね……?しかも帝国の流刑地に送られるとか……。
まだ成人前とは言え……それだけの責任を問われるのが、国民の血税で生かされてきた身の負うべき咎。
当初は国内の修道院でと言う話を、さらに重くしたのは完全に彼女自身の罪だ。
私だって……今までのことを謝罪してくれれば最初の案を飲むつもりだった。
けど……改心の余地はなさそうだと、今なら分かるわ。彼女は彼女が望んだ贅沢が国民の血税で賄われていると言う意識すらないのだから。
「ロゼもそれでいいか?」
そう問うてくるフィーロの物腰は……こっちを向くときだけは柔らかくなるのね。全く……。
「構わないわ」
私がそう答えれば、ジョゼフィーナが再びこちらを睨んでいた。本当に兄妹そろって妙なところで図太く話を聞かず、自分勝手な物言いを繰り返す。そしてその通りと言わんばかりにカッと目を見開いた。
「こ……こんの……っ、売国奴がぁっ!あんなによくしてやったのに、裏切り者おおおぉっ!」
「ちっともらよくなんてしてもらってないわよ。当時私が何も言い返せなかったことをいいことに、やりたい放題やったのはあんたの方でしょ?裏切り者と言われても、あなたたちは元々敵よ。それから売国奴と言われるのも結構。私をここまで生かしてくれた、そしてこれからも生かしてくれる国民たちに言われるのならね」
でも彼女はその予定もなくなってしまったわけだし……。
そして私が初めて反論したことで、ぽかんと口を開けている。私だっていつまでも、黙っている訳じゃないんだから。
その後ジョゼフィーナは抵抗虚しく、流刑地の修道院まで護送されていった。
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