パーティーの夜

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パーティーの夜

――――本日はヴェナトール王国の国王の座に就いたフィーロとその妃の私のお披露目……なのだが。同時に旧王家を打倒し、王家として返り咲いた祝賀会、帝国の属国としてこれから頑張ろう会など様々な意味を込めて、宗主国帝国からの使者を迎えつつ国内の貴族たちにアピールする場である。 「色々と纏めてしまったけど、大丈夫かしら」 「いいだろう?経費がかさむだけだ」 「それもそうね」 フィーロも私も、今は節約志向なのだ。けれど帝国の属国になった以上、そのお披露目にあたるパーティーでも開かないと、ほかの属国から生意気だとか、ほんとに属国として帝国に膝を折る気ある?とか見なされる……! あといくらフィーロがいるからって、帝国にほんとに服従する気があるとか疑われたらフィーロの立場がないものね……。 そんなわけで、国内の貴族は招くけど、ドレスコードは華美じゃなくていい、食事は普通、酒はほどほどに、でと言う条件付きだ。 私も質素に上品に纏めているのだから、よほどの気違いじゃなければ、私より華美な装いはしないはず。 むしろしてきたとすれば、王妃への不敬にあたる。てか、そうしていいと思っている貴族はフィーロによって忠誠心を疑われる結果となるから、お家取り潰しや追放になった元貴族たちと同じ道を辿ることになる。 なお、正当な理由なく来なかった場合も『え、何?帝国の属国になったのに文句あるわけ……?』と、見なす。 王都までの足がなければ出すと言っているし、宿泊も可能である。前政権とは違い、絞るところは絞り、出すところはちゃんと出すスタンスだ。 そうして続々と入場する貴族たち。まず挨拶に来たのは……。 「国王陛下、王妃殿下に挨拶申し上げる」 「あぁ、ヴェナトール公爵か」 フィーロが告げた通り、目の前で臣下の礼をとったのは現ヴェナトール公爵夫妻である。彼らは私が分家や門下の中から公爵を任せるのに適切だと見なした人材。 ヴェナトール公爵家は今も残されていて、領地も引き続き任せてある。ただこのままでは紛らわしいので、王家から誰か降嫁か婿入りさせた時に少し文字るつもり。 そして彼らに公爵家を臨時で任せるにあたり、王家から誰かを寄越して伴侶とさせるのは、絶対条件である。 しかし彼らは引き続きダリルの補佐のもと、公爵家を纏め上げてくれていて、公爵家の使用人や騎士たちからの評判もいいそうだ。 なお、トールはこちらに来ているので、公爵家の騎士団長は有能なものに譲ってある。 まぁそんなこんなで一番に挨拶に来てくれた彼ら。 「これからも公爵家をよろしくね」 「えぇ、もちろんでございます」 公爵たちが挨拶を終えれば、ほかの貴族たちも挨拶に来る。そして門下の貴族たちからは王妃となったことを喜ばれ、私がいるならと帝国の属国になることも歓迎してくれたようだ。何より元々の王国の名も戻って来たわけだしね。 「やっぱりロゼで良かったろ」 「あはは……そうね。ありがたい限りね」 旧王家のジョゼフィーナだったらこうはいかなかったし、そもそも質素倹約パーティーなど嫌だと豪勢なパーティーを企画して、属国の貴族として残った彼らから反発を受けただろうな。 なお、メアリィは論外である。 さらには辺境伯や、父の亡きあと心配していてくださった貴族たちも会いに来てくれた。 辺境伯が自ら挨拶に来られるのも、帝国と共に隣国を退けられたお陰ね。あと、よさそうな貴族夫人や令嬢……数少ないけど付き合いのあった女性でいい人材がいれば、城に召し抱えたいわね。 そこもしれっとリストアップしておく。貿易商をやっている貴族令嬢の子もいたし……これからヴェナートル王国の国家運営を円滑にしていく上では心強い味方になってくれるかもだわ。 そして真打ちは最後に……と、言わんばかりに皇太子殿下が来てくださり、フィーロと夫婦共に帝国の属国となったことへの謝辞を贈った。 「ふふ、今度は帝国の行事とかにも招かれるから来てね!その時は妻も妹たちもロゼちゃんに会えるのを楽しみにしてるよ」 まるで友だちのおうちに遊びにおいで~な雰囲気の皇太子殿下は相変わらずではあるが。 「わたくしも楽しみにしております」 そう返せば。 「えぇ~~」 いや、何故かフィーロが隣で不満げで、皇太子殿下が吹いていらしたけど。 質素倹約でも貴族が集まれば華やかになるというもの。そんな賑やかなパーティーのはずなのに、こんなに穏やかなのは新鮮だわ。
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