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とある騒動
――――ヴェナトール王国は多忙な日々を送りつつも、国内情勢は思ったほど反発はなく、平穏である。
しかし小競り合いがないわけではない。領地と爵位を没収され、増税や圧政を強いた分の財を没収の上、足りない分は働いて返すようにと平民送りにした一部の元貴族の反発はある。
まぁ騒いでいるだけでもう何の力もないから度が過ぎれば捕えて強制的に労働を行わないとならない鉱山や工場にぶちこむだけである。
たまにその報告書が届いたりもするものの、その他も処理するものは山積みだ。
「じゃぁこの書類は……これでオッケーね」
「はい、妃殿下」
新たに宰相に就任したのは、父が宰相だった頃の腹心。
まぁ……その、婚約者時代とやり取りは変わらないんだけどね。
こうしてみると私……元々は王妃の仕事も丸投げされていたのだと分かった。
「妃殿下、大変です!」
そこへ、城の侍従が慌てて飛び込んできた。
「どうしたの?」
「いえ……城を追い出されたかつての侍女が妃殿下に拝謁したいと」
「え……っ」
現王家に付かなかったものたちはそれぞれ相応の処罰をしたはずである。
その他にも、問題のある侍女……大体が貴族令嬢だったのだが、顔と名前は知ってたので遠ざけても変わらなかったので追い出して、まともなものだけ残したのだが。
そして彼女たちに不当に追い出されていた有能な貴族令嬢や夫人を招き直している。
「今さら何の用よ」
「なんでも、自分たちを解雇したのは不当な処罰だから撤回して欲しいと」
「王妃になった私に罵詈雑言仕事のじゃま嫌がらせ、与えられた仕事しない等散々なことをしておいて処罰は不当だなんて何なのかしらね」
「ごもっともです」
侍従の言うことも尤もである。
仕方がないので執務は宰相たちに任せ、現場に向かえば、侍女長や近衛騎士まで駆け付け結構な修羅場状態である。
「やっと来たわね!?この売国奴!」
見た顔だ。私に色々とやってきた元貴族令嬢たち。
家によってはビビってこちら側に鞍替えした貴族もいるが、それを見抜けないほど腑抜けではないので、フィーロが降爵の上、それ相応の成果を上げねば一代限りで爵位返納させるとした。
その一部のようだが。
でも……。
「売国奴でも結構。これからあなたたちも平民となってこの国の税を納める立場になるんだもの。国民にそう言われることくらい、覚悟はしてる。でも私は……この国の王妃として、信じる道を選んだだけだもの」
恥じることなどしていない。これからはあなたたちに怒鳴られて縮こまったりなんてしない。
ランゲルシア王家に反旗を翻した。それに比べればこれくらいは小さなものよ。
「な……何よ……ロザリアのくせに……!」
あなたたちまでそう言うのね。
でも気が付いてる?私にそのようなことを言うから、周りのみんながものすごく睨んでいる。あなたたち、今針の筵の状態だって。
「あなた方は王妃である私へ罵詈雑言を浴びせたとして、拘束します」
手で合図すると、彼女たちはぽかんと口を開けながらも騎士たちに連れられて行く。
「ちょ……っ、どう言うことよ!私にこんなことをしてどうなるか分かっているの!?」
「教えてやろうか?」
なおも噛み付いてくる彼女たちに対し頼もしい声が響く。しかしそれは何度も近くで聞いた……安心する、私に勇気をくれるフィーロの声。
「王妃への不敬を働いたとして、お前らの家は一代を待たずお取り潰し。爵位返納、財産没収、平民落ちとする。今、この場からだ」
『は……?』
彼女たちは完全に事態が呑み込めないようで口をぱくぱくさせている。
「まぁ、罪は罪だからこいつらは連れていけ。平民として相応の処罰を下そう」
フィーロが合図すると、近衛騎士たちがやけに笑顔で青い顔で震える彼女たちを叩き出していった。平民として……と言えど、何年かは罪人用の牢暮らしになるだろうか……?貴族令嬢のように修道院とはいかない。
「これで少しはおとなしくなって欲しいものだ」
本当なら一族郎党処刑でもおかしくはないところ、これってかなり軽い罰なのよね。
「ま、形だけでも……?寝返って来たやつらだからな。帝国は割りと寛容なんだぞ?学ぶやつに対してはな」
つまりは学ばない……前王家のようなものたちには厳格にと言うことなのだろう。
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