建国祭

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建国祭

――――翌日。 建国祭の式典は午後から始まり、そして夜は建国を祝うパーティーである。 「まぁ、素敵なレースね」 「ヴェナトール王国の伝統的な刺繍で仕立てたレースでして……」 ヴェナトール王国の伝統的な布織物に加え、レースやアクセサリーを身に付けて式典に出席してみれば、儀礼的なプログラムが終わるなり、属国の王族の妃夫人方に囲まれてしまった。 うん……?新参者だもの。もうちょっと厳しい目で見られると思っていたら……何故。 「やっぱりこれだわ!」 「幻のレース!」 「どこで手に入れられるのかしら!?」 う……うおぉう……? これ、諸外国ではそんな風に思われていたの……? 「ブルーマーレ商会をご紹介しますね」 リディアの実家の貿易商会である。うん、大丈夫。リディアの父親の侯爵だって商売儲かって大助かり。入手ルートについては商会で担うとリディアからも言われてるし、バンバン振っちゃおう……! 「ずいぶんと人気だな」 ご夫人方に囲まれていれば、ふと聞き慣れた声とともにフィーロがやって来る。隣にいる女性は……、まさか。いや、周りの夫人方もすかさず頭を下げているから……っ。 慌てて頭を下げれば。 「みんな、顔を上げてちょうだい」 どこか勇ましいような声がかかり、顔を上げればそこにはとても美しい女性がおり、その格好はドレスではなく男装であるが……この方は。 「こうしてじっくりと顔を合わせるのは初めてだ。ロザリア妃」 「こちらこそ、こうしてお会いできて光栄です!ヴィオレット皇女殿下」 イグナルス帝国の第1皇女殿下である。 他国であってもその噂も功績も届く。武勇ほまれ高く、憧れる女性は国籍を問わない。 「なに、お義姉さまと呼んでいいよ。私もロゼちゃんと呼ぼうかな」 「はぇっ!?」 そんな、光栄な……っ。 「おい、勝手に呼ぶなよ。あと何だお義姉さまって」 しかしその時フィーロの悪態をつくような不機嫌な声がかかり、皇女殿下の表情と周りの空気が凍る。いや……いくら姉弟だからって何て態度を……! 「コラッ!お姉ちゃんに文句言わないっ!」 次の瞬間ヴィオレット皇女殿下がフィーロの頭をペシイッと叩く。あれは皇太子妃殿下のよりも確実に重い一撃よね……? 「何だよその恐怖姉政治はっ!あと、いい加減ロゼを返せ」 そう言ってフィーロはご夫人方の中なら私を回収する。 「ちょ、フィーロ!外交!商売!商魂っ!」 後でブルーマーレ侯爵に説教されても知らないわよ!? 「ロゼが俺の腕の中にいるのが大前提だ」 何その前提は……っ!? 「仲がよくて何よりだが……フィーロが面白いから今度みんなでお茶しに行こうかな」 「いいですね!お義姉さま!」 「ぜひ私たちも!」 そうあははと笑うヴィオレット皇女殿下に夫人方が賛同していく。そうか。思えば彼女たちの夫も皇子か皇族。義理の兄弟や親戚になるのね。 「賑やかでいいわね。その時は張り切ってお迎えしなくちゃ」 「いや、ロゼはそれでいいのか。あの姉は来るぞ?本当に」 「大歓迎よ!今度は食べ物もアピールしましょう!リディアの実家も扱ってるかしら……?今度は国内の商会にも入ってもらって……ブルーマーレ侯爵に紹介を頼もうかしら」 「……お前は……全く。ま、気に入ったならそれでいいが」 「もちろんよ。とっても素敵な出会いがたくさんよ」 「でも、俺を忘れんな」 「忘れるわけないじゃない」 少し不満げな旦那さまはやっぱりかわいいなぁ。 そんな私たちの様子を微笑ましく見守るギャラリーがいつの間にか増えていたのは……余談だが。 今回の公務と言うか、商戦と言うか。国内の魅力のアピールは成功したのか、ここ数年低迷していた王国経済が回復しつつあるのは確かである。
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