敵の正体

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「どうやらお分かり頂けたようだな。誰が真のスナイデル国王であるかを。そうだろう?コルティア国王太子妃よ」 「あなたは国王ではないはずよ。現国王がいらっしゃるのだから」 「王位継承順位が下のあいつが、なぜ国王になるのだ?」 「そんなの私に聞かないでよ!そっちの事情でしょう?」 か弱いフリをするのを忘れて、クリスティーナは怒りに任せて声を荒らげる。 だが、なぜ兄ではなく弟が国王になったのか、その理由はあらかた想像がついた。 コルティア国を支配下に置き、他国を攻めようと考えるこの兄が王になるのは、あまりにも危険すぎる。 「あなたのお父上がお考えになったのでしょう?王位継承者をどちらにするのかを」 「そうだ。父親だけではないがな。まったくどいつもこいつも馬鹿げた考えの親族で、辟易していた。いずれ国の領土を広げ、全世界にスナイデル王国の力を知らしめてやろうと、幼い頃から多くのことを学んでいた俺に、両親は褒めるどころか、考えを改めるよう口うるさかった。それでも俺が言うことを聞かないと分かり、また子どもを作ったんだよ。15才も年の離れた弟をな」 忌まわしそうに表情を歪めて吐き捨てると、再び口を開く。 「さらには、まだ幼い弟に悪影響を及ぼすからと、俺を地方に追いやった。なんとかして自力で城に戻ると、執事としてなら住まわせてやると言われて、苦渋の選択でそれを受け入れた。いずれ弟が王になったとしても、機会をみて必ず俺が王座を奪い取る為にな」 「…その機会が、今回の私達の訪問という訳?」 眉をひそめながらクリスティーナが冷たく問うと、いかにも、と頷く。 「コルティア国がますます繁栄しているのは、この地にいても耳に入った。まずは王太子の命を奪い、この先のコルティア国の未来を暗黒に染めてやろうと思っていた。だが、殺すには惜しい男よのう。いざという時戦力になるし、お前を捕らえておけば、王太子は俺の言いなりだ。しかも王太子を人質として手中に収めておけば、コルティア国王も俺の言いなりになる。死なせなくて良かった。それにお前も命拾いしたな。あの毒薬で、今頃は二人仲良く天国にいるはずだったのに」 ニヤリと不気味に笑われ、クリスティーナは両手の拳を強く握って怒りを抑える。 「お前に感謝するよ。おかげで良い作戦ができた。さてと、忙しくなるぞ。まずはコルティア国に声明文を送らなくてはな。そして弟が動揺している隙に、必ず王座を奪い返す。ようやくその時が来たのだ」 そう言うとクリスティーナに背を向け、カツカツとかかとの音を鳴らしながら扉へと向かう。 「待って!」 クリスティーナはその背中を呼び止めた。 「なんだ?」 「フィルの様子は?無事なんでしょうね」 「ああ、まだ眠ったままだがな」 肩越しにそう返事をすると、今度こそ執事は部屋を出ていった。
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