38人が本棚に入れています
本棚に追加
ロザリーが沸かしてくれたお湯に浸かり、丸一日馬を走らせた疲れを癒やしてから、子ども達と一緒に昼寝をする。
夜になるとようやく皆の気持ちも落ち着き、国王や王妃と夕食を共にすることになった。
「なるほど。スナイデルでそんなことが…」
国王は、心痛の面持ちで視線を落とす。
「声明文が届いた時には、心臓が縮み上がったよ。ジェラルド連隊長に、とにかく様子を見て来てくれと、すぐに向かってもらったんだ。あとはただ、無事を祈るしかなかった」
王妃も、再び涙ぐみながら頷く。
「お付きの者達も、あなた達を残して帰って来たと知って、それはもう皆で心配したのよ。本当に無事で良かったわ」
「ありがとうございます」
クリスティーナが改めて頭を下げると、フィルが国王に話し出した。
「父上。スナイデル王国との平和友好条約は、滞りなく締結されました。クーデターはそのあとに起こったのです。条約を覆すことはなさいませんよね?」
すると国王は両腕を組んで、うーん、と考え込む。
「いくらクーデターによるものだったとしても、我が国の王太子夫妻が命の危機に晒されたのだ。このまま条約を結ぶというのは、考え直すべきだろう」
クリスティーナは、ハッとして顔を上げる。
フィルも隣で真剣に口を開いた。
「父上、だからこそこの平和友好条約は結ぶべきかと思います。どんな国も、いつかは危機に晒される。その時に互いに手を差し伸べ、助け合って、世界に平和の輪を広げていきたいと私は願っています」
「フィル…」
クリスティーナが呟くと、フィルはクリスティーナを見てしっかりと頷く。
クリスティーナも表情を引き締めて頷き返した。
「そうか…。そうだな、分かった。この条約は締結する。そなた達がこの国を治める時代が来ても、スナイデル王国とはいつまでも友好な関係でいられるように」
「はい、ありがとうございます」
国王とフィルのやり取りを、王妃はまた目に涙を浮かべて見守っていた。
最初のコメントを投稿しよう!