一線を越える夜

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一線を越える夜

何故、俺はここに居るのだろうか? 社員たちが俺を見る視線が痛い。 それもそうか。 買収された会社の御曹司が、自分たちが勤める会社の社長秘書をしているのだから。 俺が歓迎されているわけがないのだ。 それなのに、この男は、社員を集めて俺の歓迎会をしている。 俺に対する嫌がらせか? 早くここから帰りたい。 「飲んでるか?」 「はい。」 「主役が暗い顔するなよ。」 「すみません。」 「お前は昔からそうだよな。」 宝条が俺の頭を撫でようとした時、酒が回った社員が俺に絡んできた。 「なんでぇ、あんたが社長の隣にいるんだよ。そこ邪魔~」 その男は俺を押しのけて、宝条の隣に座った。 「あ~よく見ると、綺麗な顔してる…」 「ちょっと、離れてください!」 「聞こえなぁーい。」 だから、酔っ払いはめんどくさい。 なんで俺がこんな目に合わないといけないのだ。 そう思うと、苛立ちが湧き上がってきた。 そして、俺は立ち上がり、酔っ払い男に言った。 「不満があるのは理解出来る。だが、決めたのはあんたの社長だ。俺はそれに従うまで。文句があるなら、酒を飲んでない時に来い。分かったなら、この手を離せ。」 俺は男を睨みつけた。 その場に居た皆が俺を見て、静まり返った。 ただ、1人を除いては。
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