一線を越える夜

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「ほら、寝るぞ。」 「寝ちゃうの?」 「俺は酔っ払いとはしない主義なんだ。」 宝条は俺の頭を優しく撫でた。 「優しくしなくていい。」 俺は宝条の手を振り払った。 「さっきまではあんなに可愛かったのに。」 「俺は可愛くない/」 「強情だな。」 「わるいかよ//」 「わるくないね。そんな藤堂を抱くのもいいかもな。割り切った関係ってやつだ。」 「しない。俺、お前のこと嫌いだから。」 俺は宝条から目を逸らした。 「嫌いなら俺の目を見て言え。」 「嫌い。だからこれ以上、俺の中に入ってくるな。」 悔しい。 今も昔も宝条には勝てない。 頭は彼を拒むのに、心が彼を求めてしまう。 好きなんかじゃない。 抱かれたいわけない。 今なら、宝条から逃げ出せる。 彼を押しのけて、部屋を出ればいい。 ただそれだけ。 なのに、宝条に掴まれた腕を俺は振り解けない。 「やめるなら今だぞ。」 宝条の言葉が耳に響く。 俺は、あろうことか、静かに目を閉じた。 すると、宝条が俺の唇を強引にこじ開けた。 先程の優しいキスとは比べ物にならない。 今夜だけは勝負とかどうでもいい。 俺は自らの欲望に抗うことをやめた。
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