一線を越える夜

8/10
前へ
/24ページ
次へ
「はぁ...はぁ...」 「なんだ、もう終わりか?」 息を上げている俺とは対照的に、宝条は涼しい顔をしている。 彼を堕とすにはどうしたらいいのだろうか? 好きとか、嫌いとかそういう話は俺たちには必要ない。 愛し合って、身体を重ねたわけでもない。 だが、宝条が俺に堕ちる姿は見てみたい。 俺の中に、新たな感情が芽生えた。 だが、うつ伏せになったまま、俺は動けない。 宝条が俺を容赦なく抱いたせいだ。 「そんなわけないだろ。」 「まともに立てないくせに?」 宝条の言う通り、身体に力が入らない。 俺が枕に顔を埋めていると、宝条が覆いかぶさってきた。 そして、俺の耳を執拗に舐め始めた。 「あぁっ...///」 「身体は動かなくても、声は出るんだな。」 宝条の笑い声が、耳元で聞こえる。 それだけで身体が疼いてしまう。 すると、彼は俺の背中に舌を這わせた。 「俺はまだ満足してない。」 「え...?」 「だから付き合え。」 そして、宝条は後ろから俺の中に挿入した。 腰を何度も打ち付けられ、俺は喘ぐことしかできない。 今、宝条はどんな顔をしているのだろうか? 俺を嘲笑っているのか?それとも、俺に感じているのか? 相手の心が見えないセックスが、こんなにも虚しいと初めて知った。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加